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『うわー、真っ暗だ。最悪。』
岳「勉強しないで寝てるなんて珍しいな。」
『日誌書いてたら眠くなった。誰かさんが書いてくれなかったんで。』
岳「すんませんでした。」
2人で歩く並木道。時折吹く暖かな風が遅い春の訪れを知らせてくれているみたい。
私、いつの間に寝ちゃってたんだろう。起きたら柴崎いるし、なんか距離近いしびっくりしちゃったよね。
岳「お詫びにチョコ2つ買ってあげるから。」
『わーい。』
岳「....なにその気持ちの籠らないわーいは。」
だってドキドキしたんだもん。
なんであんな近くにいたの?男の子とあんなに顔近づけたことないよ。寧ろ今普通に柴崎と話してる私すごいと思うんだ。もちろんチョコは2つ買ってもらうけど。
『ってかさ、明日誕生日だね。なに欲しい?』
岳「この時点でなに欲しいとか聞くあたりが全然準備する気ないよね。今から買いに行けないでしょ。」
『だって聞いても欲しいもの言ってくれないんだもん。』
明日は柴崎の誕生日。何か買おうと思ってたけど結局何も買えずに今日になってしまった。
岳「おめでとうって言ってくれるだけでいいよ。物はいらない。」
『そう言われても困る。あげたいもん。』
せっかくの誕生日なんだからお祝いしてあげたいじゃんね。
岳「.....あ、今欲しいもの思いついた。」
『なに?あんまり高いのは無理だよ?』
岳「弁当。」
『お弁当?』
岳「弁当作って来てよ。俺の分も。」
だめ?と言ってチラリと私を見る柴崎。
どうせ自分のを作るんだからもう1個くらいなんてことないけど、
『それでいいの?』
岳「うん。俺椎名のごはん好き。」
『....なに食べたい?』
一瞬言葉が詰まったのは褒められたのが嬉しかったから。
それだけ。
岳「....たこさん。」
『は?』
岳「だから、たこさんウインナーがいい。」
『あはははははっ!』
たこさんウインナーって。幼稚園生だよ、そのリクエスト。
岳「.....笑うなよ。」
『だって!柴崎可愛い!笑』
岳「....やっぱ弁当いらない。」
ふくれっ面の柴崎と大声で笑う私。
そんな笑い声を優しい春風が攫っていった。
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作者名:Pin | 作成日時:2016年1月27日 23時