幸せの代償【WT】 (ページ6)

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「...だからあいつはもう街にはいない。俺が聞いたのはそれだけで...」

　何も言えなかった。
　「限界」スマイルのその言葉がやけに引っ掛かる。アイツは何か、一人で抱えていた..？

「なんで俺にだけ伝えてくれたのかも分かんない、けど......多分、俺が弱虫だからだ。ぶるっくやシャークんならアイツを張り倒してでも止めたんだろうけど、俺にはその勇気が無かったから。スマイルもきっとそれが分かった上で俺にだけ、伝えてくれたんだ」

「...ごめん、さっきは」

　ぽつり、俺はきんときを見る勇気が無くて、少しそっぽを向きながら謝った。別にきんときを責めたくて胸ぐらを掴んだ訳じゃ無い。隠し事をしているのが嫌だった。
　今一番ぶん殴ってやりたいのはスマイル、お前だ。俺達の前から、簡単にいなくなって、残された方の思いも知らないで。死を誘う砂漠に消えていった君は、今どこにいるのだろうか。

「...誰にも何にも言わないで出て行かれるより、マシだよ.....」

　ぶるっくはそう言うと、話してくれてありがと、きんとき、と言って微かに微笑んだ。俺は立ち上がると、きんときの前まで歩いてその足を止める。

「あいつなら、きっと何処かで泣いて、すぐ帰ってくるだろ」

俺の言葉に、きんときが泣いた。きんときは悪くないよ、そう言って彼の肩を叩けば彼はもっと泣いた。
その涙が俺の心を揺さぶって、どうしようもないこの胸のモヤモヤをいっそう大きくさせた。
この感情は、一体？

「...アイスでも、食べよう？」

答えは簡単、苦しいのだ。からっぽなのだ。
スマイルがいたはずの心にまるで穴が空いたような空洞ができて、そしてそこには誰もいなくなった。

ぶるっくの言葉に頷けば、真っ先に外へ出る。

「......どこ行ったんだよ、スマイル..」

強がりは、弱虫の裏返し。