2. ページ2
.
「そんなん今度でよかったのに」
『でもほら、今日ご飯行かれへんくなっちゃったし』
「せやねぇ。残念やけどさすがにこの天気じゃ外出るの危険やしなぁ」
約束をした日には無かったはずの少し季節外れの台風は、勢力を増してここ数年で最大になるかもとまで言われていた。現在は西日本に上陸していて、今晩辺り関東に来るって朝の天気予報で言ってたっけ。
『正門くん今日帰るん？』
「そのつもりやってんけど今日大阪帰るのって台風に立ち向かっていくようなもんやん？せやから今晩はホテル泊まって明日様子見て帰ろかーってことになってん」
『確かにその方がいいかもねえ』
「正門、俺先戻っとくで」
モニターに群がる大勢のスタッフさんの中からひょこっと出てきたのは、正門くんより少し小さくて黒髪の顔の綺麗な人。あ、この人知ってる。正門くんのメンバーさん。名前わからんけど。
「ちょちょ、誠也くん待ってください」
「なんやねん」
「Aちゃん、うちのメンバーの末澤誠也くん。誠也くんはAちゃん知ってますよね？」
「まあ、ようドラマとか出てはるし」
『あ、はじめまして！白坂Aです！』
さすがに初対面のアイドルさんと握手するのはな、と思って出しかけた右手をすぐに引っ込めて軽くお辞儀をした。その一瞬を見逃さんかったんか、にやにやと笑う正門くんに視線だけ向けて睨むと口パクでごめんと謝られた。
「あー、ども。末澤です」
『あ、はい、』
「っ、俺戻って大晴と佐野呼んでくるわ」
「あ、誠也くん！あー、行ってもうた」
少し不機嫌そうな顔をして出て行ったすえざわさん？すえざわくん？に申し訳ない気持ちになる。やっぱりいくら知り合いとは言え、勝手に入ってくるのは良くなかったかなあ。
『ごめん正門くん。あたし怒らせちゃったね』
「ん？あ、誠也くん？大丈夫。あれただの人見知りやから(笑)」
『そうなん？勝手に入ってきてなんやねんこいつとか思われてない？』
「あれはたぶん照れてるだけやと思うよ(笑)」
『ほんまに？そうやったらいいんやけど』
「Aちゃんが気にすることちゃうから大丈夫よ。Aちゃんもう帰るん？」
『うん、雨ひどくなる前に帰ろうかなって』
「せやね。その方がいいと思う。俺一旦戻らなあかんからお見送りできひんけど気をつけて帰ってな？」
『ありがとう。正門くんも気をつけてね？』
「ん、ほなまたご飯行こね」
『行こ行こ！じゃあお邪魔しました！』
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 808人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：てと | 作成日時：2022年11月21日 23時
