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周りにいたスタッフさんたちにもお礼とお別れを言って、正門くんのいたスタジオを後にする。今度こそほんとに帰ろうと思いエントランスに向かうと、思ってたよりも雨は結構強めに降っていて。
……あー、これはよ帰らなやばいやつやな。今日はマネージャーさんのお迎えも無いし、たまには電車で帰ろうと思ってたけどタクシー呼ぼ。少し震える手でタクシーアプリを開いた瞬間、音こそ聞こえへんものの、外が明るく光るのが見えた。
あ、あかん。無理や。外出られへん。
その瞬間、無意識の内に電話を掛けていた相手はもちろん望やった。なんにも考えずに掛けてたけど、多分向こうだって仕事中のはずやし出てくれへんかも。他に頼れる人いてへん。どうしよ。
何コール目かの後、繋がったと思った電話に出たのは望ではなく、留守電を告げるセンターのお姉さんの無機質な声やった。
どうしよ。望があかんねやったら淳太くんも照史くんもあかんやんな。たぁしも今日は大阪帰ってて東京いてへんて言ってたし。どうしよ、怖い、どうすればいいん。
「Aちゃん……？」
エントランスのソファで縮こまる背中に掛けられた声は、さっき聞いたばかりの、男の人にしては少し高めの声。振り向くとそこにいたのはすえざわさんで。
『あ、』
「あー、帰らへんの？」
『あ、えっと、雨、すごいからタクシー呼ぼうかな、って、』
「ああ、そっか。うわ、ほんまや！めっちゃ降ってんな？！」
すえざわさんの予想していたよりも降っていたらしく、元々の声より更に高い声を出して驚いていて、その様子が面白くて少しだけ笑ってしまった。
「……なんで笑ったん、今」
『ふふ、すえざわさん、さっきと全然違うからなんかギャップすごくて(笑)』
「すえざわさんて」
『あれ、名前間違えました？すえざわさん、ですよね？』
「いや、合ってるけど。なんか距離遠ない？」
って言われても今日初めて会ったし。初対面の人に対する距離感てこんなもんじゃない？違うっけ？あたし間違ってる？
悩んだ末に絞り出した答えは、
『じゃあ、すえざわ、くん？』
「まあ、ええか」
『？？』
「いや、こっちの話」
『はあ、』
少し納得いって無さそうなすえざわくんに不思議に思っていると、握りしめていたスマホが着信を告げる。すえざわくんを気にしながら画面を見れば、相手は望。
「俺のことは気にせんと出ぇ？」
『ごめんなさい。ありがとうございます』
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作者名：てと | 作成日時：2022年11月21日 23時
