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中也side
宵音に布団を掛け、唯一残る机の上の帽子を掴んで、カメラを一瞥してから部屋を出る。
中「・・・世話ンなったな」
見張りに声を掛けて、其の儘ビルに戻った。
直ぐに呼び出され、首領の元へ向かう。
コンコン。
中「失礼します」
森「嗚呼中也君、お帰り。無事で良かったよ」
中「只今戻りました。御心配有難う御座います。・・・此の度は自分の不注意で仕事に支障を来して仕舞い、済みませんでした」
森「嗚呼・・・。全く、気が早いのは君の悪癖だよ。関係の無い一般市民を殺して仕舞い掛けるなんて・・・最近は治ってきたかと思ったのだがね。今回は随分と感情的だったじゃないか」
返す言葉もねぇ・・・。
中「本当に済みません」
森「まぁ宵音さんは気にして居なかったようだけれど、次からは気を付ける様に」
中「はい」
部屋を出た後、俺は直ぐに或る人物を探した。
中「ーあァ居た、おい樋口」
樋「な、中原幹部⁉何の御用でしょうか」
緊張した面持ちで答える樋口。
中「お前に相談があるんだ」
樋「か、幹部が?私に⁇」
先刻から、俺の頭の中では首領の一言がずっとぐるぐるして居た。
ー感情的、か。
・・・言い訳に聞こえるかも知れねぇが、あれがもし宵音じゃ無けりゃあ、あそこまで早とちりしなかったんじゃねぇか、という、妙な確信が在った。
・・・彼奴と一緒だと、どうも調子が狂う。
中「樋口の経験を聴きてぇんだ。なんつーか・・・其奴と一緒に居ると、自分っぽく無くなるっつーか、冷静で居られなくなるっつーか。其奴が話してるだけで、なんか・・・兎に角、其奴見てると変な気持ちになんだよ。・・・此の感じ、知らねぇか?」
だから、“マフィアに向いて居ない”と云われる程感情豊かな樋口なら、此の変なのを止める方法が判るかも知れない、と思ったのだ。
因みに、何故かは知らねぇが、姉さんにだけは絶対に話さない方が良い、と本能が云って居た。
ー話し終えて樋口を見ると、樋口は[信じられない]と云う様な表情。
なんか無性に腹立つな・・・。
暫く黙って居た樋口は、唐突に顔を上げ、
樋「お目出度う御座います‼」
中「は?」
困惑する俺を余所に、らしからぬ熱い口調で語り始めた。
樋「判ります、本当に良く判りますとも・・・!幹部、其の感情はですね・・・・・・恋です!」
中「んなァッ‼?ッなんっ」
何でそうなんだよ⁉
樋「其の方と話してる時、テンションが上がるしょう?」
・・・そうかも。
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作者名:灰翠玲 x他1人 | 作成日時:2020年10月25日 6時