【文スト】気儘に【短編集】

【中原中也・手袋】 ページ9

※手袋を外さないのは何故かなーという完璧な妄想。中也さんわからない。手袋外しても汚濁は発動しない設定で。


ある時、部下に言われた一言がきっかけだった。

｢中原さんってー｣
｢あァ？｣

書類整理の真っ只中、紙の擦れる音が心地よい執務室に、部下のAの声がふと響いた。

｢手袋外さないんですか、邪魔じゃないんですか其れ？｣

言われてみれば、基本的には外さないなあと自身の手袋をはめた手をじっと見てみる。

｢特に理由はねェんだが…？｣

大量の書類を引っ提げた部下の顔が目の前にあった。

｢外してもいいですか！｣

書類は机に乱雑に置き、持て余していた左手を取られる。
マフィアとはいえコイツも女なんだよな、危機感ねえなあとか考えてぼーっと眺めていたら、


｢っ、冷てッ!?｣

｢うわ、中原さん手ェ暖かい！それに滅茶苦茶綺麗！｣

手袋を外され、外気に晒される手をぎゅむぎゅむと両手で揉むように暖めろとばかりに包んでくる。

｢馬鹿、なんで寒いなら寒いって言わねェんだ｣

｢あ、いや、寒いわけじゃ｣

｢は？なんでこんな冷たいんだよ｣

左手でギューと冷たい手を握りこむ。

｢あ、の、冷え性で｣

｢先に言えよ…。｣

ぽん、と膝を叩き、乗るように促す。

｢っ〜〜!?｣

あわあわと口を開閉させ、真っ赤になって躊躇うAを引き寄せて膝に乗せる。暖かい。

｢寒くなったらまた言え。お前限定で暖めてやる｣

｢う、はい…。｣



(入りにくい…。)
(先輩どうしたんですか？)
(中原さんへの書類は後回しにするぞ)
(…？)

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