検索窓
今日:10 hit、昨日:395 hit、合計:131,815 hit

ページ36

.


外がザワザワと騒がしくなった事に気がついたのは、それからどれくらいだった頃だったか。

きっと私が感じているよりずっとゆっくり進んでいるだろう時間に嫌気が差してくる。

犯人が建物を立ち去ったのかな。だからみんな逃げようとしていて騒がしいとか?

でもそうだった場合_____



爆弾はもう少しで爆発する。



その事実にゾッとして、ふるりと小さく体が震えた。

血管が凍ってしまうんじゃないかと思うほどに急激に体が冷えていくのを感じる。血の気が引くとはこういう事なのだろうか。

嫌だ。死にたくない。

そんなの絶対にいやだ。

誰か助けて。

怖い、


だれか______






「A!」





その声音は、私をどれだけ安心させてくれるのか。

パッと顔を上げて閉じられたその扉一点を見つめる。
その扉の向こうにいるはずの人を探して。

「Aっ……クソ、どこだよっ」

扉の向こうから微かに、焦りを含んだ声音が聞こえてくる。私が求めていた彼の声だ。

でも、私が備品室に閉じ込められたのを見ていた人がいないから、私がどこにいるのか分からないんだ。

口は塞がれていないんだから、声を出せばいい。

そのはずなのに、震えた唇からは彼を呼ぶその声さえ出てくれない。それは恐怖からか。

もう彼が来てくれたから何も怖くないのに。
もうきっと大丈夫なはずなのに。

ポロポロと視界が滲んで堪えていた涙が堰を切ったように溢れ出す。

感情が渋滞して、言葉が出てこない。
この短い時間で、声の出し方を忘れたかのように。

声を出さないと、気がついて貰えないのに。
声を出さないと、助けて貰えないのに。


はくりと開いた口からは、声にならない吐息が落ちる。


声を出して、
彼を呼ばなきゃ。



「A!俺を呼べ!」



まつだくん、



『ぃ、じんぺいっっ!』

・→←・



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (203 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
632人がお気に入り
設定タグ:名探偵コナン , 松田陣平 , 恋愛   
作品ジャンル:恋愛
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

✧︎ - 本当に好きすぎて一気読みしてしまいました…素敵な作品をありがとうございます!! (4月14日 1時) (レス) @page50 id: 28351a5556 (このIDを非表示/違反報告)
えりんぎのバター炒め(プロフ) - あわさん» はわわわ神作?神作なんて言ってもらえるんですか……?すごく嬉しいです!私の文章力で松田陣平の素晴らしさを伝えきれているのか分かりませんが……笑 更新頑張らせていただきます💪 (2023年4月16日 18時) (レス) id: 61116f8e5d (このIDを非表示/違反報告)
あわ(プロフ) - 素晴らしい…神作すぎる…更新待ってます! (2023年4月16日 8時) (レス) id: a26e70e8e6 (このIDを非表示/違反報告)
えりんぎのバター炒め(プロフ) - ???さん» ひぇぇ好きだなんて言って貰えるなんて……ありがたいです!続き書きます!そちらこそ体調に気をつけてくださいね(*´﹀`*) (2023年2月26日 17時) (レス) id: 61116f8e5d (このIDを非表示/違反報告)
えりんぎのバター炒め(プロフ) - アリアさん» 本当ですか!?そう言ってもらえるなら喜んで続きを書かせていただきます(^ - ^ )コメントありがとうございます! (2023年2月26日 17時) (レス) id: 61116f8e5d (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:えりんぎ | 作成日時:2023年2月22日 17時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。