1.行きつけのカフェ ページ1
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何の変哲もない、ただの日常。
大学2回生になったけど一緒にいる友達も同じだし、
バイトも去年と変わらないし、
これといった趣味もない。平凡な大学生。
ただ、私には毎朝の日課があって…
♪カランコロン〜
「いらっしゃいませ」
『モーニングセットください』
「お掛けになってお待ちください」
朝の7時半、店内には見慣れた顔のお客さんと
いつもの店員さんしかいない。
わたしはいつものモーニングセットを頼み、
溜まっている課題をするのが日課。
課題がない日も、必ず足を運んで
好きな本を読んで9時まで時間を潰している。
コトンと音がして顔を上げると、
店員さんがいつものセットを持ってきてくれた。
「お待たせ致しました、モーニングセットです」
『ありがとうございます』
細い銀のメガネをした店員さんがニコッと私を見る。
エプロンが似合うな、とぼんやり眺めるこの時間が好き。
友達には連絡先を聞けば?と言われるけど
そんな事は望んでいない。
ゆっくりとした時間の流れを
店員さんの横で過ごすことのできる
カウンターの特等席だけが、私の楽しみ。
本来、モーニングセットはコーヒーしか頼めないが
私がコーヒーが苦手でそれに気づいて以来
こっそりミルクティーをついでくれるようになった。
最初こそ申し訳なくて無理して飲んでいたものの
ヴッという声が出てしまったのを
店員さんは見逃していなかったらしく
心配そうな顔をしながら「大丈夫ですか?」
と聞いてくれたのが始まりだ。
『あ、はい。すみません』
「もしかしてコーヒー苦手ですか?」
『…すみません』
「謝らないでください、ミルクティーはお好きですか?」
『好きです…。おいくらですか?』
申し訳ないと思いつつ、
まだただの店員さんとしての認識だったあなたの顔を見上げると、ニコッと優しそうな顔をして笑って
「いいんです、いつもありがとうございます」
と言いながらミルクティーを渡してきた。
まだ来始めて1週間ほどだったのに
私の事覚えてくれていたんだ、と意識し始め
そこからまんまとこの店員さんのことが
好きになってしまったみたいだ___
そんな懐かしい気持ちになりながらも
私よりも少し白いんじゃないかと思うくらい白くて綺麗な手で、手馴れた手つきでコーヒーを入れる店員さんを見つめる
これ以上は望まない。
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作者名:ミイ | 作成日時:2023年7月16日 21時