さっさと死んじまった方がまだマシなこの世界で ページ12
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「おいガキ、生きてるか。」
男の声。朦朧とする意識の中でそれだけが脳に届く。音を発するのすら億劫で、そのままでいれば今度は頭を叩かれながら聞かれた。地味に痛い。僅かに手を動かして生きてる事を伝えたが、男の声は止まない。乱雑な手つきで髪の毛を引っ張られた。ぐぅ、と反射的に零し顔が歪んだ。
「今にも死にそうだな。」
視界がハッキリしなくて男の顔はよく分からない。しかしまだ若い男だっただろう。
「放っときゃ死ぬ命だ。オレが通りかかった事に感謝すんだなガキ。」
どの道いずれは死ぬのだから、だったら自分はこの静かな時にひっそりと死んでしまいたい。そう思っていても、男に「生きたいなら飲め」と水を出されれば、自分の手はそれに伸びた。細かい事は無視して、本能的に動いたようだった。
水筒の中身を全て飲み干してから、男の顔を見る。若い、と思ったのは当たっていたようで、二十代半ばといった男だった。
「オレはオマエの命の恩人だ。」
挑発的に映る笑みを浮かべて男は立ち上がる。そのまま背を向けた男は「着いてこい」と一言だけ言って先を歩き出した。その姿を間抜けな面で眺めていれば「早くしろ!」と急かされる。拒否権は無いらしい。のそのそと立ち上がって覚束無い足取りで男を追いかけた。恩人だと自分で言うのならおぶってくれたって良いのに、そんな文句を心の中で呟きながら。
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ラッシーはん(プロフ) - 待って返信きた!?すごく続きも楽しみですし書き方参考にさせて頂いてます!!対比しているってとこはアスタ=近距離主人公=遠距離みたいなもんですかね!間違ってたらゴミ出しに出されてきます。そして畑の肥やしに生まれ変わってきます。無理なさらず頑張ってください!! (6月6日 20時) (レス) id: 848084950d (このIDを非表示/違反報告)
Hana(プロフ) - ラッシーはんさん» コメントありがとうございます!そう言っていただけて嬉しいです!もう一人のアスタの話だと思って読んでいただけたらと思います。対比してる部分も作りたいなぁと思ってるので、楽しみにしていただけたら嬉しいです! (6月6日 15時) (レス) id: 906e49b810 (このIDを非表示/違反報告)
ラッシーはん(プロフ) - こんなに短く簡潔で面白くて凄いです!!めっちゃ応援してます!! (6月5日 2時) (レス) @page2 id: 722157c700 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Hana | 作成日時:2023年6月2日 22時