爽やかスマイルにご注意を (ページ40)

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彼に手を引かれて来たのは、少し歩いたところにあるひとつのマンションだった。

『…純喜くんの家？』

純「そやで。待ってな、ちょっと片付ける」

慣れたように鍵を開け、玄関に入れてもらった。

入った途端に広がる彼の香りに、緊張が高まる。

…初めて、来た。

靴箱のうえには写真立てが何個も飾られていて、

彼の赤ちゃんのときのものやサッカーをしているもの、誕生日のものと色々。

ぜんぶ、あのきらきらした笑顔で笑ってる。

高校生の彼の笑顔に面影を感じてぼーっと見ていると、

純喜くんが呼びに来た。

純「…カナ、こっち来て」

『うん、お邪魔します』

後ろについて行き、着いたのは彼の部屋。

物が多くて男の子っぽい部屋をイメージしてたけど、

意外とモノトーンで大人な部屋で少し驚いた。

純「急に家とか連れてきてごめん…
あ、もし嫌やったら全然別の場所でもええけど…！」

『…いいよ、私は』

純「ほんまに？あれやで、無理せんでも…」

『いいってば…』

しゅん、とする彼を横目に、もっとマシな返事をすればよかったと後悔。

でもいまはそんな余裕ないの

彼の部屋に来ただけで緊張して心臓がばくばくしてるのに

今から、お別れなんだもん。

これで終わりなんだって思ったら、かわいく振る舞う余裕なんてない。

終わる場所が初めて来た彼の家って…

トラウマになりそうだなー…

考えることが多すぎて逆に冷静になり、そんなことまで思っていた。

純「あの、カナ…？

まず、えっと…ごめん。あの日会いに行けんかって」

『…いいよ、しかたないじゃん』

あの日というのは彼のご飯会の日のことかな

女友達のところへ行ってしまった日。

純「それで俺ほんまに、考え直したんやけど…

ほんまに最低なことしとったなって。」

『…なんで？』

純「俺男友達とか女友達とか特に分けてなくて、

対応とか話とかも男女で差はないと思ってた。

俺の中で"友達"ってひとくくりにしとった。

…でもカナに言われて、改めて考えたら、距離感とかほんまにおかしかったなって…」

正座して拳をお膝に置いて、しゅんと落ち込んだように話す純喜くん

彼が言うことは、まさしく私も思っていたことで

やっと気づいたのか、と言う感じだったのだけど

わかってもらえたことが嬉しかった。

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