第十四話 ページ14
颯汰 視点
狐になった彼女は大粒の涙を流したかと思うと、スルスルと縮んで再び人間の姿に戻った。
どうやら体力の限界だったようで、気を失っている。
俺はとりあえずケガの手当てをしなければと思い、彼女を横抱きにして店まで走った。
「若旦那…!突然店を開けるから心配したんですよ?!そちらの女性は…?」
「ごめんなさい。その話は後にしてもらってもいいですか?とりあえず今は手当てを」
店に入るとすぐに使用人が走って聞いてきたけど、目線で制しながら治療をうながす。
すると、納得のいかない様子ながらすぐに彼は治療道具を持ってきてくれた。
「これは…酷いケガですね…」
使用人が思わず声を漏らす。
彼女の身体は全身アザや切り傷まみれになってしまっていた。
俺と初めて会った晩は傷ひとつない滑らかな…ってこんな時に何考えてるんだ俺!!!
そんな思考を振り払うようにブンブンと首を横に振り、
彼女の肌を水で清め、塗り薬を塗って包帯を巻いて行く。
頬にまでつけられた傷に、俺まで痛いような気分になった。
「…しばらく二人きりにしてもらえませんか?」
静かに隣にいた使用人にお願いすると、しぶしぶといった感じで部屋を出て行く。
ようやく彼女と二人だけになった部屋の中で、俺は苦しげに目を閉じる彼女の額に口づけをした。
その時突然彼女がうーんと唸った(うなった)かと思うと、ゆっくりと目が開く。
「あ…なたは…」
「あ、覚えてくれていましたか?」
すると完全に目が覚めたのか、彼女はまだ身体が痛むはずなのに部屋から逃げ出そうとした。
慌てて引き止めてもう一度寝かせる。
「ダメですよ!酷い怪我なんです。
今日は泊まって行ったほうがいいですよ」
「きっと梓が待ってる…帰らなくちゃ」
梓…?聞いた事のない男の名前が彼女の口から出たことに、胸がチクリと痛んだ。
「梓って…それがあなたの好きな人ですか?」
「え?」
胸からジワリと滲む(にじむ)どうしようもなく黒い感情が言葉になって出てしまう。
「その男が好きだから、あなたは俺から逃げたんじゃないんですか?」
彼女の目がハッと見開かれるような気配がした。
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サボテンの花(プロフ) - 抹茶カステラさん» うわあ〜!ありがとうございます(ノ)゚∀゚(ヾ)この後お話は大きく動きますが、最後まで見守って頂ければ嬉しいです! (2015年2月25日 0時) (レス) id: c8a8a442e9 (このIDを非表示/違反報告)
抹茶カステラ(プロフ) - 今後の展開が気になります!あの2人のうち1人選べと言われたら、迷います(笑)これからも更新頑張って下さい! (2015年2月25日 0時) (レス) id: db1d54f625 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:サボテンの花 | 作成日時:2015年2月19日 3時