逃走用車 ページ37
「____陽さん!」
古い記憶を思い出していた時、冷たい雪が頬に当たった。
そこで、静かに乾いた唇を動かす。
『異能力【雨の中で最初に濡れる】』
瞬間雪と共に冷たい外気がその場にいた人々の頰を、首筋を擽る。
それを巻き起こした当の本人は、自分が作った小さな氷の粒達で衝撃を減らしていき、黒いバンの上に着地する。
そして、開いていた車の後部座席に飛び込み、扉を閉めれば車は発進した。
『____独歩君、潤一郎君、ナオミちゃん、助かったのですよぉ〜。
ありがとうなのですよぉ〜』
「いえ、間に合ってよかッたです」
後部座席の方から運転席の方を見れば、茶髪に人の良さそうな笑みを浮かべる少年__谷崎潤一郎とその妹、ナオミ、そして堅苦しい顔でハンドルを握る国木田がいた。
降谷と会う前に探偵社に連絡して、谷崎の細雪と逃走用の車の手配をして貰った。
飛び降りて来るときに、谷崎の細雪で姿を消して自分は己の異能力で着地する。
そして誰にも暴露ずに車に乗り込み逃走。
他にも何個か策を用意していたのだが、これで成功して良かった。
最悪自分で姿を消す方法も考えていたが、此方はデメリットが多い。
この異能力も万能ではないのだ。
谷崎の異能力のように姿を眩ますのはかなりの難易度。
防犯カメラから姿を隠すように、一方の面から姿を隠すのは簡単だが、細雪の様に四方からは身を隠せない。
そして中々に強力な異能力の為、デメリットも必然的に多く使いこなすのは難しい。
そんな条件を考慮してまで自分の異能力を使って逃げるのは不可能に近かったのだ。
「このまま探偵社に向かって良いですか?」
『あ、良いのですよぉ〜。
よろしく頼むのですよぉ〜』
陽は微かに自分の手が震えているのを隠す様に、スーツを脱いで自分の膝にかけるのだった。
ラッキーアイテム
谷崎ナオミのセーラー服
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作者名:鸞宮子 | 作成日時:2020年1月12日 16時