【鬼滅の刃】一妻多夫制の柱さん

贈られた櫛 参拾弐 ページ43

｢もう体調は平気なの？無理してない？｣


隊服を着て、私が持っている羽織に手を伸ばす義勇にそう声をかける。


義勇の肩に羽織をかけてあげると、再度肩にかけ直して位置を安定させた。


最後に袖に腕を通した義勇は私に目を向けることなく、素っ気ない態度であぁと言う義勇。


手入れされていない黒髪を雑に結ぶ義勇をしばらく見つめてから、
その素っ気ない言葉に返事を返した。


｢そっか、ならいいね｣


普通ならムッとするような態度だけど義勇に悪気はない。


これが冨岡義勇という男なんだからしょうがないのだ。


こんなこと言えるのも、私が義勇と長く一緒に居るから言えるわけだけど。


しのぶはいつも言葉の足りない態度にイラついてるみたいだね。


まあ仕方ないか。


義勇の日輪刀を手渡してから、私も任務に行く為の支度をし始める。


義勇と同じように隊服を着て羽織に袖を通し終わると、
最後にいつも懐に入れている小物入れを取り出した。


小物入れの中身は櫛や紅などの女性には欠かせない物ばかり。


化粧には微塵も興味が無かったけど、カナエに言われて私も化粧に気を配るようになったんだっけ……。


今は亡き親友"胡蝶カナエ"の事を思い出しながらも、小物入れの中にある綺麗な櫛に手を伸ばした。


そのまま弟と同じ宍色の髪に通して、髪の絡みを少しづつ解いていく。


この櫛は旦那の実弥から貰った物で、櫛を貰った時はとても嬉しかった。


愛されてるんだな〜って感じて凄く嬉しかったのだ。


その時の事はまるで昨日の事のように覚えてる。


頬を少し紅に染めて気まずそうに顔を逸らしながら、ポイッて感じで渡されたのだ。


そんで見た目と渡してきた物が合わなすぎて爆笑して怒られたんだっけか。
うん、確かそうだった。


珍しく照れてる実弥は傑作だったな〜。


その時の顔を思い出すと、思わずふっと鼻で笑ったような笑いが出てしまい慌てて口を押さえる。


私の様子に気付いた義勇は、不思議そうに見つめてから私に声をかけてきた。


冨岡｢…？何を笑っている｣


｢ふ、っ…え？あぁ何でもないよ！ちょっとした思い出し笑いだから……っ…！｣


冨岡｢頭が可笑しくなったかと思った｣
｢やだ辛辣｣


大袈裟に落ち込むと、義勇は冷ややかな目で私を見つめた後
てちてちてち＿という足音で玄関に向かってしまった。


襖を閉めた音が部屋に響き渡った途端、義勇の部屋は静寂に包まれ
私の中を孤独感が支配していった。

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