死別の話 ページ8
｢昨晩、杏寿郎が夢に出てきたの｣
千寿郎｢！！兄、が……？｣
そう問うように繰り返し言うと、私を抱きしめる手に力が入ってAさんの指の爪が背中に食い込んだ。
爪が食い込んで私の体の肉を抉り、神経が痛いと感じろと脳に信号を出す。
でも、もっと……もっとずっと痛かったのは心だった。
刃物で抉られたように傷口はぐちゃぐちゃになって、ぽっかりと大きな穴が空いて喪失感が頭を支配した。
｢杏寿郎ね、最初にすまんって言ったんだよ｣
私は強く抱きしめられたまま続く言葉を待った。
無言が続くとAさんから嗚咽が漏れ出し、体を震わして心の痛みに必死耐えていた。
｢そ、じたらね……約束ｯ守れ、なぐてずまないっで……
"約束を守れなくてすまない"
心から…ｯ…あい、あいじてるっで…ｯ
"心から愛している"
お"れを…！っ、愛じてぐれでっ…ｯ…うれじかっだっで…ｯ…！
"俺を愛してくれて嬉しかった"
先に逝くごどを、ｯゔぅ…おまえを置いて逝くこどを…ｯゆるぜっでぇ……！
"先に逝くことを、お前を置いて逝くことを許してくれ"｣
千寿郎｢兄上…うっ……！｣
｢あ"いじてるっ…でッ！｣
"愛してる、A"
兄はAさんを愛していた。
自分の命より、大切なのはAさんだと私に教えてくれたのを覚えている。
その時に笑った兄の慈愛に満ちた笑顔は、脳裏に焼き付いて離れない。
恐らく兄があの世に逝ってしまう前に向かったのがAさんの所だったのだ。
この世に遺してしまった最愛の妻に、別れを告げて謝罪する為に＿＿＿
｢ひｯく、ばがぁ…っ…う…！馬鹿ぁ"！！私のっ、ごと…ｯ…置いて逝きやがってぇ"…！
許さない"…っ！ぜっだい…ゔｯ…絶対絶対ｯｯ!!!ゆるざないんだがらぁ"あああ"！
ゔあ"あぁぁ"ぁん！！｣
Aさんは兄への不満を心から吐き出した後、喉が枯れそうな程泣き叫んで夫を失った悲しみに嘆いていた。
｢やだぁ…帰ってきでよぉ…っ…またわら"ってよぉ………！
Aって、名前呼んでよ…っ……！此処にいるっで言ったじゃんかぁぁ…ｯ…
杏寿郎ｯ………やだ、やだぁ……やだあぁぁ"…っ！｣
Aさんの涙と鼻水で服は汚れたがそんな事はどうでも良かった。
今はただ泣いていたかった。
悲しんでいたかった。
叫びたかった。
当たり前を壊された悲しみを、憎んでいたかったのだ。
笑ってくれた兄はもう
この世に居ないのだから。
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春月卯月(プロフ) - フィオナさん» ありがとうございますー！一応最後の展開までは考えているので頑張ります！応援ありがとうございます！ (2019年11月20日 21時) (
レス) id: e961db7c14 (このIDを非表示/違反報告)
春月卯月(プロフ) - ユリさん» 気になって下さって嬉しいですー！なるはやで頑張ります！ありがとうございます！ (2019年11月20日 20時) (レス) id: e961db7c14 (このIDを非表示/違反報告)
春月卯月(プロフ) - 影姫一閃さん» タイトル悩んだんですよ本当にー！いい話なんて滅相もない！勿体ないお言葉です！ありがとうございます！頑張りますー！ (2019年11月20日 20時) (レス) id: e961db7c14 (このIDを非表示/違反報告)
春月卯月(プロフ) - 椿さん» 応援ありがとうございますー！楽しみにして下さって光栄の極み！頑張りますね！ (2019年11月20日 20時) (レス) id: e961db7c14 (このIDを非表示/違反報告)
フィオナ - この後の展開が気になります。更新頑張ってください (2019年11月20日 20時) (レス) id: ba2a71100d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：春月卯月
| 作成日時：2019年11月19日 22時
