苦手なもの ページ11
川上side
あなた「…」
川上「?どした?なんかあった?」
あなた「あ、いえ…ごめんなさい、なんでもないです。」
いつものようにオフィスで記事を書いてたら急に隣に温かみを感じた。
ふと見るとAが耳を塞いで俺にくっついている。
よく見るとかすかに震えているような気もする。
川上「なんでもないことないやろ、声死んでんで。どうした、なにがあったん?」
あなた「…か、」
川上「か?」
あなた「…か、雷が…」
川上「雷?」
ふと外を見てみるとたしかに土砂降りの雨が降っていて、白く光っては派手に轟音を響かせている。
川上「うわ、すごい雨。全然気づかんかった。」
考えてみれば窓は閉め切ってたし今の今まで俺だいぶ集中してた。
あなた「…」
再び白く光るとAは体をビクッとさせて再び俺にくっついていた。
これは、もしかしなくても…
川上「…もしかして、雷苦手なん?」
あなた「…はい。原理は分かってるし、落ちないことも遠いところにあるってことも分かってるんですけど、やっぱりあの光と音がどうにも苦手で…」
たしかにこの感じだとちょっと遠いところにいるみたいだ。
川上「人がそばにいると安心するならそばにおってええよ。」
あなた「…いいんですか?お邪魔にならないですか?」
川上「うん。もうほとんど終わったし、あとはふくらさんに確認してもらうだけやし。」
そう言ってパタンとパソコンを閉じるとAに向き合った。
気を紛らわそうと会話を振ろうとするが全くテーマが出てこない。
伊沢さんとかこうちゃんはこういう時どういう話をするんだ…
頭をフル回転させていると再び白く光って轟音を響かせた。
ビクッと震えて、俺にまた一歩近づく。
雷がなる度に一歩ずつ俺に近づいてて、どんどんその距離が埋まっていく。
そしてその度にA特有の爽やかで、それでいてちょっと甘みのある香りがふわっと香る。
川上「…在原業平は、こんな気持ちやったんかな。」
あなた「え?」
川上「伊勢物語。身分の違いがあって結ばれそうにないけどどうしても好きで、ずっと求婚してた女を盗む話、あったやろ。その時も、こんな天気だったよな。」
あなた「あぁ、芥川の話ですね。あれも切ないですよね…最後に鬼に食べられていなくなったなんて。」
川上「女は男に助けを求めて叫んだのに男は女を追っ手から守るために倉庫の警備をしてたが故にその声に気づかんかった…」
あなた「でも、どうして急に芥川なんですか?」
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蒼暉(プロフ) - 現実逃避あるふぁさん» そう言っていただけて嬉しいです!これからも応援よろしくお願いします! (2019年10月2日 20時) (レス) id: 9d4d633b18 (このIDを非表示/違反報告)
現実逃避あるふぁ - このお話めっちゃ好きです!更新待ってます! (2019年9月28日 21時) (レス) id: 9e6e3a6762 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:蒼暉 | 作成日時:2019年9月8日 0時