29話 ページ31
万が一井伊が立ち上がったとしても見えるように、馨はスクリーン前の床に座った。馨の身長はみやびよりも小さいため、スクリーン前に座ったとしても問題はなかった。
「4対1でよく来たな」
「時間がなか。とっととやるくさ」
「貴様の美意識はカッコいいが、それじゃあ勝てん」
「ごちゃごちゃうるさいくさ。本当は俺にビビっとっとじゃなかとね?」
「あ?」
「あんたたちは全員手負い。そいで本当に俺に勝てると思っとうとか!?」
「っきゃあああ!!!」
今日1の歓声が上がった。
「ちょちょちょ馨ちゃん落ち着けって」
「だってだって! 皆様方見ました!? は〜、流石ですわ清正様。格好いい……」
うっとりとスクリーンを見つめる馨は、普段とはまるで別人だった。いつもなら周りとは一線引いている感じで、冷静沈着という言葉がよく似合うような人間だ。しかし加藤が関わっただけでこの変わりよう。天真爛漫を絵に描いたようだ。
どれだけ馨が加藤を信頼しているか、好いているかが丸わかりだった。
「私1人で十分だ」
「待て」
伊達が行こうとするも、既の所で秀吉が自分にやらせてくれと待ったをかけた。
井伊や榊原は秀吉が血迷ったと嘲笑うが、馨は驚愕の表情を浮かべていた。
(もしかして……)
嫌な予感がした。けれど、勝つのは清正に決まっている。秀吉が出るのなら、彼の負けは確定しているも同然。なのに手を握りしめてしまう。
「いいえ、いいえ……。勝つのは旦那様です。それは、何があっても変わりません……」
それはまるで自分に言い聞かせているようだった。
「本当にいいくさ?」
「あぁ」
「それじゃ、遠慮なしにやらせてもらうくさ」
秀吉は勢いよく加藤に向かっていくが、あっさりと……本当にあっさりと殴られて床に転がり込んだ。あまりにもあっさりとやられたため、見ていた全員動揺を隠せなかった。
殴った本人である加藤ですら、あれ? といった顔だ。
「あ、あら……????」
「普通に殴られてるじゃないか」
「大丈夫じゃ、見てみぃや。ちゃんと立ち上がって来とる。今殴られたのは恐らく罠じゃ」
「なるほど、加藤の気が緩む隙に何かする作戦か!」
「そういうことじゃ、秀吉は恐ろしく頭の切れ……」
もう2発目、しっかりと殴られた。床に倒れたままの秀吉をうつ伏せにし、その背中を何度も殴る加藤。
「殴られ放題、春のフルボッコ祭りだ」
「ふ、」
不謹慎ながらも笑ってしまった。
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タカコ(プロフ) - 嬉しいです!楽しみにしてます! (2022年10月6日 11時) (レス) id: e1a7229537 (このIDを非表示/違反報告)
Chiharu(プロフ) - タカコさん» 旗印戦のあれこれは本編にねじ込む予定です。馴れ初めは番外編に入れてもいいかもしれませんね! ご意見ありがとうございます! 近日中に出す続編でも番外編について触れてみようと思います! (2022年10月6日 11時) (レス) id: 7076ed243d (このIDを非表示/違反報告)
タカコ(プロフ) - はい、最終回後の話やドラマでは無かったオリジナルの旗印戦、加藤くんと夢主ちゃんの馴れ初めなんかを読んでみたいです(*≧∀≦*) (2022年10月6日 8時) (レス) id: e1a7229537 (このIDを非表示/違反報告)
Chiharu(プロフ) - タカコさん» コメントありがとうございます! 今のところ考えてはいませんが、こういうシチュエーションが見たい! という希望が多く集まればやる可能性もあるとは思います。最終回より後の話を番外編にするのもアリですね🤔 (2022年10月6日 2時) (レス) id: 7076ed243d (このIDを非表示/違反報告)
タカコ(プロフ) - Chiharuさん、一つ質問します。この小説の番外編って作る予定は無いですか? (2022年10月5日 23時) (レス) id: 3e1c504208 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Chiharu | 作成日時:2022年9月25日 5時