15話 ページ17
「おお、あ、俺五中くさ」
「五中！？」
「二中くさ」
「清正様に…………その他の皆様方」
「お前ほんとに加藤以外眼中にねえのな」
調理実習後のクラス前の廊下。そこで友人らと語り合う加藤を見つけた馨は、思わず足を止めた。
「あら、そんな事はございませんよ。今川様、龍造寺様、竹中様」
入学してからまだ1ヶ月も経っていないが、馨はクラスメイト全員の名前を憶えていた。
それを知らない3人は驚きで目を見張ったが。
「よいしょー」
座り込み引きずってしまった袖を持ち上げながら、加藤の足の間にピッタリと収まった。今更だが、床にしゃがみ込んで話す姿は完全にヤンキーのそれだ。
「そういえば何の話をしていらしたんですか？」
「ああ、しゅっ……」
「はぁ！？」
どうやら秀吉が特進クラスチンピラ代表4人組を挑発しているようで、教室内がやけに騒がしい。様子を見に行くかと立ち上がろうとする加藤だが、馨がしっかりと加藤の腕を掴んでいるため立とうにも立てない。
「せっかく皆様方と歓談中ですのに……」
「またいつでもできるくさ」
「むう」
仕方ないと言わんばかりに立ち上がる。何となくそういう気分だったのか、珍しく……本当に珍しく、加藤の腕に自分の腕を絡めた。そのままぴったりと寄り添いながら歩く様は、あの竹中が二度見したほどだ。
「今日の馨は甘えたくさ」
にっこにこに笑いながら楽しそうに教室に入る。しかしその顔は、教室に入った瞬間一気に険しくなった。
「じゃあ！ 俺が倒したってやつがおったら名乗り出ろや」
会話の内容は、先日の旗印戦の際、他校のヤンキーを倒したのは秀吉か否か、だった。
「確かに、ほとんどのクラスメイトの皆様方は教室で見ていましたし、豊臣様は途中でみやび様の元へ行かれた…………筋は通っていますわね………………あら？ 皆様方如何なさいました？」
「全部声に出してるくさ」
「まあ！ 申し訳ございません、完全に無意識でしたわ」
馨は考え事をする際、無意識に独り言を言う癖がある。そのため普段は何も考えないようぼーっとしたり、飴を舐めたりしているのだが、今回ばかりはうっかりしていた。
しかし、そんなうっかりに助けられた男が1人。
「いやいや！ 事実確認ありがとう！」
ちなみに助けた本人である信長は口を大きく開けて欠伸をしている始末。
結局、名乗り出る者はおらずあれは秀吉の手柄となり、彼は皆を挑発し教室から出ていった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 73人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
タカコ(プロフ) - 嬉しいです！楽しみにしてます！ (2022年10月6日 11時) (
レス) id: e1a7229537 (このIDを非表示/違反報告)
Chiharu(プロフ) - タカコさん» 旗印戦のあれこれは本編にねじ込む予定です。馴れ初めは番外編に入れてもいいかもしれませんね！ ご意見ありがとうございます！ 近日中に出す続編でも番外編について触れてみようと思います！ (2022年10月6日 11時) (レス) id: 7076ed243d (このIDを非表示/違反報告)
タカコ(プロフ) - はい、最終回後の話やドラマでは無かったオリジナルの旗印戦、加藤くんと夢主ちゃんの馴れ初めなんかを読んでみたいです(*≧∀≦*) (2022年10月6日 8時) (レス) id: e1a7229537 (このIDを非表示/違反報告)
Chiharu(プロフ) - タカコさん» コメントありがとうございます！ 今のところ考えてはいませんが、こういうシチュエーションが見たい！ という希望が多く集まればやる可能性もあるとは思います。最終回より後の話を番外編にするのもアリですね🤔 (2022年10月6日 2時) (レス) id: 7076ed243d (このIDを非表示/違反報告)
タカコ(プロフ) - Chiharuさん、一つ質問します。この小説の番外編って作る予定は無いですか？ (2022年10月5日 23時) (レス) id: 3e1c504208 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：Chiharu | 作成日時：2022年9月25日 5時
