23話 ページ25
「旦那様…………難しい顔をなさっていますわね。昨日黒田様と何かありました?」
学校が近付くにつれ加藤の顔が険しくなっていくのを見て、馨はそう声をかける。聞いていないようでちゃんと聞いている馨は、昨日の加藤の発言を覚えていたようだ。
「…………」
「旦那様が何をお考えか私にはわかりませんが……よく考えたうえでお決めになった事であるのなら、私は反対しませんよ」
「ありがとう、馨」
学校につくなり加藤は理事長に用事があると言い、一旦馨とは別行動を取った。この時はまだ思いもしていなかった。まさか加藤が旗印を掲げていようとは。
「みやび様、おはようございます」
「馨さん! おはようございます、今日は加藤君とは一緒じゃないんですか?」
「はい、清正様は理事長の元へ行くと……」
「理事長様の所に……?」
2人して加藤の行動を不思議がりながらも談笑していると、そこに秀吉がやってきた。
朝から朗らかに笑う彼だが、この間から、どうにも表情に陰りが見える事があるため馨は密かに心配していた。
「なんか馨ちゃんと話すの久々やわ〜」
「確かにそうですわね。ここのところ豊臣様はお忙しかったですし」
「馨ちゃんと話すためやったらいっくらでも時間取るで?」
「いけません。馨さんには加藤君がおりますから」
「そうやけど〜」
既にこの時点で馨は2人の話を聞いていなかった。あまりにも加藤の帰りが遅いからだ。心配で理事長室まで迎えに行こうと思ったら、加藤が険しい顔で帰ってきた。
「清正様……?」
覚悟を決めたようなその表情に思わず駆け寄るのを躊躇うが、加藤は馨を見た瞬間少しだけ表情を緩ませた。
しかし何となく膝に座るのはやめておいた方がいい気がして、空いている椅子を引き寄せ隣に座る。
「にが……」
カードフォンをいじるでもなく、ポケットから出した飴を舐める。今日は何故だかいつも以上に苦い気がした。
ぼんやりと時が経つのを眺めていたら、急に校内放送が入った。
「皆さん、公認旗印が出ました」
誰もが秀吉が酒井・榊原へ出した旗印だと思っていた。中には秀吉を卑怯者と罵る者もおり、馨は眉をひそめる。
(彼はただ旗印戦のルールに則って戦をしていただけですのに……それに彼より私の方が余程…………何にせよ、卑怯者なんて言葉……ああ、それで)
馨は秀吉に、自分と似た何かを感じていた。
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タカコ(プロフ) - 嬉しいです!楽しみにしてます! (2022年10月6日 11時) (レス) id: e1a7229537 (このIDを非表示/違反報告)
Chiharu(プロフ) - タカコさん» 旗印戦のあれこれは本編にねじ込む予定です。馴れ初めは番外編に入れてもいいかもしれませんね! ご意見ありがとうございます! 近日中に出す続編でも番外編について触れてみようと思います! (2022年10月6日 11時) (レス) id: 7076ed243d (このIDを非表示/違反報告)
タカコ(プロフ) - はい、最終回後の話やドラマでは無かったオリジナルの旗印戦、加藤くんと夢主ちゃんの馴れ初めなんかを読んでみたいです(*≧∀≦*) (2022年10月6日 8時) (レス) id: e1a7229537 (このIDを非表示/違反報告)
Chiharu(プロフ) - タカコさん» コメントありがとうございます! 今のところ考えてはいませんが、こういうシチュエーションが見たい! という希望が多く集まればやる可能性もあるとは思います。最終回より後の話を番外編にするのもアリですね🤔 (2022年10月6日 2時) (レス) id: 7076ed243d (このIDを非表示/違反報告)
タカコ(プロフ) - Chiharuさん、一つ質問します。この小説の番外編って作る予定は無いですか? (2022年10月5日 23時) (レス) id: 3e1c504208 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Chiharu | 作成日時:2022年9月25日 5時