黒姫と黒王子【及川徹】

22話 ページ22

さすが王子というべきか


あれから数日経つけど


何事ももなかったかのように


いつもどおり振る舞っている



けど



ときどき周りを見計らうと隙をみつけては


「Aが好きだよ」だの


「オレのものになりなよ」と


耳元でささやいては不敵な笑みを浮かべて私をからかった。




そして


私の前で素でいることが多くなった、と思う。

あの貼り付けたような笑顔で軽口を叩くことはなかった



黒「ねぇ、そういえば足はその後大丈夫なの？」





及「あぁ、病院にいったら軽い捻挫だった。
　 いまは練習も少し軽めにしてるしね。
　 Aに気づかれたことが最大の汚点だよ♪」





王子スマイルをすることもなくなって、
いまはただの性格の悪いイケメンだ。




岩「お前、Aに気づかれなかったら
　 絶対言わなかっただろーがよ。」



及川の性格を察して、
テーピングをしたことを
翌日すぐ岩泉に話しておいたのだ。




及「まぁ、大したことなかったのは事実だし。」




岩「うるせー。つーかよ。
　 烏野との練習試合、影山出せとか言っといて
　 お前が出ないんじゃ、かっこつかねぇだろうが。
　 さっさと治せボケ！！」




黒「へー練習試合あるんだ？」



及「そう、俺達の中学の時の後輩で影山飛雄っていう
　 くっそ生意気な後輩がいるんだ。
　 コート上の王様がどうなてるか本当に楽しみだよ♪」



めずらしく徹の顔が邪悪にワクワクしているのがわかる

さながら腹黒王子といったところか。




岩「あんまいじめんなよ。」



及「やーだね！誰があんな奴！！」


そんな二人のやり取りを見て笑いがこぼれしまう





及「ねぇ、A。
　 今日暇ならちょっと付き合ってよ。」



黒「え？あーでも今日はモールに行こうと思って。
　 徹、部活でしょ？」



及「うちは月曜は部活休みなんだ。
　 俺もモールに買い物に行こうと思ってるからちょうどいい！
　 一緒に行かない？♪」



久々に王子スマイルを浮かべた及川に少し警戒するも、
GWに実家に帰るためにペットキャリーを買わなければいけない。
今日しかチャンスがないのだ。



黒「なら、しょうがない・・いいよ。」



及「全く嬉しそうじゃないんだけどー？
　 まぁいいや。じゃあ行こうか。」





これ以上、深入りされるのは困る

でも素直な王子スマイルの及川徹を

なぜか上手くいなすことができなかった。

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