心得2つ目《命のこと》 ページ3
切れた縄が落ちて埃を舞わせ、縄を切ったであろう小型ナイフの刃は差した斜陽で鈍く光を放っている。
男、永井幹部は私に手を伸ばした。
其の手をとらず自力で立ち上がると、身長は私よりも高かった。まだ見上げるくらいにある。
185くらいだろうか。
『所で君は先ほど何をしようとしていたのかね?』
呆れたように聞いてくる其の姿は全て分かった上で質問してくる時の首領とそっくりだった。話したくはなかったが年上ということもあり、素直に話さざるを得なかった。
「死のうとしていました。ご迷惑でしたら謝罪します」
切れた縄を取って元あった場所に戻す。
切れてしまったそれがもう役目を果たすとは思えなかったが、床に置いておくと証拠が残る。
台も元に戻して軽く手の砂や埃を払った。
『……そうか』
永井は1つ呟くと、少しだけ笑って私を呼んだ。幹部として互いに名を知っているのは当然だったがあまり呼ばれたくない気持ちも確かにあった。それを表情から消し去り無表情のまま永井を見る。
『幹部として君に心得を教えてあげよう』
鈍く光っていたナイフをしまい込んで、永井はまた薄く微笑んで告げた。
人差し指を立てて軽く振っている。
『幹部としての心得其の1。
___________命は大切にすること』
私の目の前にいた永井は少し吹いた風とともに廃墟の入り口の扉に寄りかかっていた。風のような行動に驚いてしまった。私の顔を見てか、幹部は楽しそうに笑っていた。
『分かったら返事』
「っはい!」
反射的に返事をしてしまい、自分の予想外にまた心を曇らせた。するとそれに割り入るようにして短い感覚の足音とともに亜麻色の髪を揺らした帽子の少年が走ってきた。廃墟の入り口で永井とぶつかると、変な悲鳴をあげて後ろに転がっていった。
『おやおや、大丈夫かい?』
「ってて………あ、永井幹部!!」
少年、中原中也が目を輝かせた。
きっと私を探してここまでかけてきたのだろう。あの河川敷からも離れてないし、声が聞こえていたのかもしれないし。
しかし、相変わらず小さい。
全てにおいて小さい男だが其の実力は多少なりともよかった。合わなくて嫌な相手だった。
だけど、あの綺麗な瞳は少しだけ憧れだった。
「げっ」
気づいた中也が嫌そうに声を上げた。
私がさっきのことを口にすることはきっと生涯ないだろうから、安心して其の声に向き合った。
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しぇるふぃあ。 - すみません、「聖バレンタイン日」が「生バレンタイン日」になってます…!小泉幹部すごく好みです、更新応援してます!! (2018年3月21日 12時) (レス) id: 2fca820d76 (このIDを非表示/違反報告)
ちゃら - 面白いです!頑張って下さい! (2018年3月11日 12時) (レス) id: b7f29ff674 (このIDを非表示/違反報告)
NamE.薆(プロフ) - かれんさん» 今回の話の題名では、夢主さんが最年長幹部なのでそれをそのまま題名にさせてもらっています!太宰さんは確かに最年少幹部ですけどね! (2018年2月23日 22時) (レス) id: 71af860354 (このIDを非表示/違反報告)
かれん(プロフ) - 下のコメントに「最年長幹部では?」とありますが、正しくは「最年少幹部」なのでは?細かいところすみません、お話、最高に面白かったです! (2018年2月23日 21時) (レス) id: bd11a80ca1 (このIDを非表示/違反報告)
hi - 凄く楽しかったですこれからも更新頑張ってください (2018年2月8日 17時) (レス) id: 8a1cd5ab5f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:NamE.薆 | 作成日時:2018年1月27日 19時