太宰幹部の包帯事情２【太宰治】 (ページ9)

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カルテ４３枚目【甘夢】ページ9

「んっ、む……ぁっ、…はぁ、っふ」

舌が絡む。
熱い、舌。ねっとりしてて、ゾクゾクして、息ができなくなっちゃいそうで。
幸せ。

「ふっ……っぅ……はぁっ」

やっと息をつけた頃にはもう息も切れ切れ、医師の方はまだまだ余裕そうで、なんだかムカついて。

「んっっ！」

思いっきりキスしてやった。
私だって経験はある。長い方でやった。

「んむっ、ふ」

『ふぁっ……っ。ぅ……はぁっ』

あんまり長くできないけど、ちょっとくらい何か考えてくれれば……。

『ぁっ……はぁっ、はっ……っ』

私が顔を上げると、やけに息を切らして顔を赤くした医師がいた。なんだか、可愛い。
医師は隠すように顔をそらしたが、耳まで赤いから隠せてない。

「………かわいい」

『…………っ、聞こえてるんだけど』

其処から何秒か沈黙した。
話すことがない。急にキスなんてしたから、私だってドキドキしてる。
医師も、そうだと思う。

『……初めて』

「ぇっ」

『だから……初めて、なんだって。長い方の、キス』

耳をさらに赤くして、医師から告げられた。
初めて。私が初めて。
大人なキスをしたのは、私が、初めて。
やばい、だめだ。

「…………んふふっ」

すっごく嬉しい。

『な、なに笑ってるの！』

「ごめんなさい。えへへ、初めて、貰っちゃった。せんせぇーの初めて。一個だけもらえた」

ちょっと大人のキス。
それだけで嬉しかった。
初めてを一つくれたことだけで、それだけで頑張れる気がした。
流れていた血が理由を無くしたように止まる。
あれ、なんだか、意識が………

「せ、ん……せ」

『______________！！！』

薄れゆく意識に、倒れこんだ体。
それを支えてくれた温もりが、愛おしくて、消えかけの意識でそっと裾を掴んだ。

ーーーーーー

ーーー

ーー

ー

『っ、ちょっと！！【最年少幹部様】！？大丈夫！？！？』

目の前で倒れた彼の腕からは傷つけた部分からの血が酷く流れていて、今すぐ止血しないと出血死する可能性があった。

『誰か！！誰か来て！！』

大声で叫びながら、応急処置をする。でも出血が多すぎる。
待って、待ってよ！

『やだ、やだよ………目開けてよ！！』

すると、横から手が伸びて来て包帯をそっと彼の腕に巻いた。

「落ち着きなさい」

真剣な顔で僕を見たのは、鴎外だった。