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カルテ64枚目【信用】 ページ30

『辻村深月』



綺麗な名前に復唱したのはちゃんと覚えてる。水色の綺麗な髪を持ってて優しい声の人だった。
辻村さんは任務でこの辺りに来ているのだそう。ちょうどあの男と同じ任務をしているらしくて、ちょっと話をして別れた。


あの時、何か聞いておけばよかったって思ってるよ。



その日の夜だった。
眠れない時になんとなく走ったりしてたんだけど、ちょうどその時、辻村さんに会ったんだ。
否、会ったって言うのはおかしいな。
出会わされたんだ。
悲鳴が聞こえて行ってみたら、辻村さんがナイフを突きつけられてた。
咄嗟に助けに入ったよ。奪い奪われる世界で、少しでも仲良くしてくれた人を見殺しにするのは惜しいと思ったからね。


ナイフを持った男に軽く足をかけてナイフは蹴り離してとりあえずは逃がしてやった。
彼女が、殺すのはやめてと言ったから。



怪我の手当てをして、少ししたら追っ手が来たよ。だから手を差し伸べてやった。




『逃げるぞ!!』



「ですが……」



『いいから!早く!!!』




手を取った二人で走ったよ。
しばらく、しばらく走って追っ手を巻いてそうしたら、とりあえず休もうって廃墟みたいなところに連れていかれたんだ。




(ここ、なんか火薬の匂いが……)



「A君」




辻村さんが僕を呼んだ。
その時にはもう遅くて、何人もの大男が僕を取り囲んでいて、辻村さんは僕に銃を向けていたんだ。




『なんで……』



「……ここは奪い奪われる世界。少しでも人を信用してはダメよ」



今更遅い忠告をし終えて、男たちに指令を出すと僕を殴らせ始めた。
蹴って、殴って……どれぐらい続いたかわからないけど何日も過ぎていたような気もしているし、あっという間だったような気もしている。
ある時、思ったんだ。





なんで僕は、彼奴を助けたんだろうって。
なんで僕は、自分を助けなかったんだろうって。





自分を助けていれば、こんなことを知らずに済んだのに。自分に不思議な力が、異能力というものがあるということに。




その時、僕は初めて異能を使った。
こんな暴走の形で。
バリアを広げ、廃墟の壁を多分、破壊して、挙げ句の果てには人を殺した。
スラムではよくあることで、奪い舞う世界ではごく普通のことだけど、前からしていたこの行動がその時はとても怖く感じた。
いつしか異能は止まっていたけど、僕の記憶はあんまりない。




気付いた時には、誰もいなかった。

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NamE.薆(プロフ) - 赤珠(元 チョコうさ。)さん» もしよろしければリクエストォォォ!! (2018年1月1日 22時) (レス) id: 71af860354 (このIDを非表示/違反報告)
NamE.薆(プロフ) - 赤珠(元 チョコうさ。)さん» そ、そ、そ、そのつもりでございましたぁぁぁぁあ!!!!やりますやります!頑張ります! (2018年1月1日 22時) (レス) id: 71af860354 (このIDを非表示/違反報告)
赤珠(元 チョコうさ。)(プロフ) - 続編…だと…!?この流れからしてあのパターンだよね?うわあああああああああ!!もしよければ与謝野さんと話しして欲しいですー!!!!!! (2018年1月1日 21時) (レス) id: 5fa7fae13e (このIDを非表示/違反報告)
赤珠(元 チョコうさ。)(プロフ) - ぬおおおおおおお!!!!…。←語彙力 控えめに言って…神です。(真顔) (2017年11月13日 8時) (レス) id: 5fa7fae13e (このIDを非表示/違反報告)
赤珠(元 チョコうさ。)(プロフ) - NamE.薆さん» なぬ…!?…。死亡フラグが思いつかねぇ。← (2017年11月5日 10時) (レス) id: 5fa7fae13e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:NamE.薆 | 作成日時:2017年10月27日 19時

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