カルテ59枚目【臆】 ページ25
それからいくつか質問をして、少しずつだけれど持って来たサンドイッチを食べてくれた。
大庭医師は呆れたように時々笑った。
私も少しだけ笑って、仕事を忘れないように、獣の自分を押さえ込むようにした。
「ふぅ、じゃあ後は」
『まだ何か聞くことあるの』
そっけない態度は変わらないが私への目つきは柔らかくなり、いくらか話しやすくはなった。
そして本題。
私が今日ここに来たのは根本的な異能力の制御。今はまだ援助の段階だけれどマフィアのためにも本人のためにも制御できるに越したことはない。
そのためには、本質に触れなくてはならない。
「医師は、なにを怖がっているの」
そう聞いた途端、医師の目つきが変わった。
ぎらりと私を睨んで、立ち上がった。
栄養不足で倒れかけたのを支えようと手を出すと、医師はそれを強くはねのけた。
「っ」
『……お前も、同じか』
その子供みたいな話し方と、泣きそうにも見える眼差し。お前も、という過去にもあった言い方。
本質に触れるとはこういうことだと、わかっていたはずだけれどはねのけられた手が痛いように、何か別のものまで痛みを感じていた。
『あいつらみたいに、僕を殴るのか』
「は……」
あいつらみたいに?
僕を殴る?
疑問から注意深く見た医師の体は所々に古傷が走っている。
太ももに一つ。腹にも多分ある。
それらの傷は、その時のものなのか。
『僕が、僕がいなかったらあいつは死んでた。僕がたすけたんだ。助けてやったんだ!なのに、なのに、あいつは僕を置いていった。
僕が助けてやったのに、僕があいつの命を救ってやったのに!!
僕、悪くないはずなのに。
僕は、人助けをしてやったのに!!!』
医師が叫ぶと壁がみしりと音を立てた。
みると異能によるバリアが急速に広がり、室内に収まらなくなって来ていた。
やばい。このままだと……。
「医師!落ち着いて」
『黙れ!!お前だって僕のこと置いてくくせに!!どうせそうなんだ、結局は自分なんだ!!
自分も守れない奴に、他人を守る資格なんてなかったんだ!!!』
「A!!」
大庭医師を壁に強く押し付ける。
わたしよりも少し低い身長の彼女が、抵抗せずに私を睨み続ける。叫びは、嗚咽に変わり始めた。
『っ、自分を、守れば……よかっぁの?
人を、助けちゃ……っ、いけないの…?』
大庭医師の嗚咽が私の何かを切り裂いていく。
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NamE.薆(プロフ) - 赤珠(元 チョコうさ。)さん» もしよろしければリクエストォォォ!! (2018年1月1日 22時) (レス) id: 71af860354 (このIDを非表示/違反報告)
NamE.薆(プロフ) - 赤珠(元 チョコうさ。)さん» そ、そ、そ、そのつもりでございましたぁぁぁぁあ!!!!やりますやります!頑張ります! (2018年1月1日 22時) (レス) id: 71af860354 (このIDを非表示/違反報告)
赤珠(元 チョコうさ。)(プロフ) - 続編…だと…!?この流れからしてあのパターンだよね?うわあああああああああ!!もしよければ与謝野さんと話しして欲しいですー!!!!!! (2018年1月1日 21時) (レス) id: 5fa7fae13e (このIDを非表示/違反報告)
赤珠(元 チョコうさ。)(プロフ) - ぬおおおおおおお!!!!…。←語彙力 控えめに言って…神です。(真顔) (2017年11月13日 8時) (レス) id: 5fa7fae13e (このIDを非表示/違反報告)
赤珠(元 チョコうさ。)(プロフ) - NamE.薆さん» なぬ…!?…。死亡フラグが思いつかねぇ。← (2017年11月5日 10時) (レス) id: 5fa7fae13e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:NamE.薆 | 作成日時:2017年10月27日 19時