太宰幹部の包帯事情２【太宰治】 (ページ21)

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カルテ５５枚目【原因】ページ21

「次に、あの人の現状の原因。
つまりは、異能力暴走の原因を教えるわ」

思わず生唾を飲んだ。
原因。
異能の発動を脳で行なっている。それが暴走するときは脳へと直接的な異常、または記憶の干渉が主とされている。
過去の記憶を鍵として稀に異能が暴走する。
暴走を最終形態とする異能もあるが、大庭医師の場合もそれと類似しているものだろう。

「……あの人の異能の暴走原因は記憶に関係しているわ。過去の、リンタロウとの出会いと一つの出来事が関係してるとみて間違いないわ」

「首領と何があったんですか」

少女は悲しそうな顔をしてぽそりと呟いた。

「その日、リンタロウは前首領の命令でとある組織の殲滅に向かっていた。その時に大庭女医と出会った。そのときはまだ幼くて１０くらいの歳だったそうよ。リンタロウが敵組織の殲滅計画実行の数時間前に出会って、少し話をして別れただけの関係だったの、最初はね。

リンタロウの組織には一人、若い女の人がいたのだけど、その人の危機を大庭が救ったの。
大庭にお礼がしたいと女の人が古い洋館に連れて行ったけど、それ以降のことをリンタロウは知らないみたい。

リンタロウも任務が終わってその女の人を探してたらしいんだけど、見つけたのはその人の肉片と氷みたいに冷たい目になった大庭だった。

それから、リンタロウは大庭を拾って自分の弟子として育てた。それからの話は置いておくけれど、異能暴走の主な原因は、
女の人による意図的な敵組織への囮行為。
その女の人は、途中で敵組織から勧誘を受けていたやつで誘い出して一人ずつ殺す予定だったらしいわ」

「つまり、大庭医師があんな風に、定期的な異能の暴走にさいなまれる原因になったのは、
女の人による吐き捨てだったわけだね」

助け、異能。
吐き捨て。一人ずつ。
大庭医師が以前に怪我をした時には、助け、と異能、の二文字を呟いていたらしい。
それは記憶による干渉で一時的な精神の乱れがあったからだろう。
今更だが、改めてあの人の脆さを知った。
明日にでも会いたい。
すこしでも、あの人の脆さに寄り添っていたい。
そんな風に思えてきてならなくなって、
そっと椅子から立った。