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カルテ50枚目【初日】 ページ16

朝。
早速、首領から連絡があった。
[本日の午後2時。配給を頼む]
簡易な文章。
だからこそ意図が伝わりやすい。
素早く準備をして、外に出る。私自身、ご飯は食べない。食べたくもないし、どうでもいい。
今、私の中で興味があるのは
【大庭医師の異能の暴走と記憶の関係性】
首領からの追加命令でもあったが自分自身気になっていたのもある。
前に異能力について聞いた時も、なんだかあまり話したくなさそうだったし、あまり聞けるとは思えないが、駄目元で言ってみるとしよう。





「失礼します」



塔の管理人から食事をもらう。
管理人は私をなんだか心配そうに見ていた。それに少し、かわいそう、なんて言う感情の色が含まれていたことは触れないでおく。
可哀想なんて思われたくはない。
私はそんな風に思われるために、今から彼女の元へ会いに行くわけではないのだから。




「…………ふぅ、失礼します」




うめき声が止まった。
バリアの広がりが見える。
もう扉ギリギリまで迫ってきている。いつ、塔を覆ってもおかしくない。
私はそっと片手に食器を持って、片手でバリアに触れた。
すると、赤黒い文字列がひかれ、バリアはじわじわとなくなっていく。
私が一歩踏み出してバリアの中に入ると、それは完全に閉じてしまった。
驚くこともないが、今は目の前の人物に向き合わなければ。




「大庭医師」




『っ、あ゛っが……はぁ、っ、だ、れ』




「………太宰です」





名乗ると、医師は驚愕したように目を開くと、ベッドの後ろの方に撤退した。
そして膝を抱え、じっと私を睨みつけた。
白衣は薄汚れ、所々に血が付いている。
薄暗い部屋には食事が散乱し、唯一ベッドだけは白く残されていた。
棚も、床も、壁も、汚くて古くさい。
だからこそ映える。医師の白さと赤い血が。




『っは、ぁ……ぅっ、そこ……おいて…っ』




「………食べさせるようにって」



『おいて………あとで、た、べ…』



急に体を丸めて苦しそうに咳き込み始める医師を支えると、医師は私を見ていない眼差しを向けた。
そして、私以外の誰かに話す。





『っ……たすけ、た…っ、だけ』




助けただけ、と聞こえるそれをよく聞くと、
助けたかっただけ、でも聞こえてくる。
誰に言っているのかわからない。
彼女の目は何も捉えていなかった。
ただ虚空に見える記憶の何かに、必死に訴えかけるばかりであった。

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NamE.薆(プロフ) - 赤珠(元 チョコうさ。)さん» もしよろしければリクエストォォォ!! (2018年1月1日 22時) (レス) id: 71af860354 (このIDを非表示/違反報告)
NamE.薆(プロフ) - 赤珠(元 チョコうさ。)さん» そ、そ、そ、そのつもりでございましたぁぁぁぁあ!!!!やりますやります!頑張ります! (2018年1月1日 22時) (レス) id: 71af860354 (このIDを非表示/違反報告)
赤珠(元 チョコうさ。)(プロフ) - 続編…だと…!?この流れからしてあのパターンだよね?うわあああああああああ!!もしよければ与謝野さんと話しして欲しいですー!!!!!! (2018年1月1日 21時) (レス) id: 5fa7fae13e (このIDを非表示/違反報告)
赤珠(元 チョコうさ。)(プロフ) - ぬおおおおおおお!!!!…。←語彙力 控えめに言って…神です。(真顔) (2017年11月13日 8時) (レス) id: 5fa7fae13e (このIDを非表示/違反報告)
赤珠(元 チョコうさ。)(プロフ) - NamE.薆さん» なぬ…!?…。死亡フラグが思いつかねぇ。← (2017年11月5日 10時) (レス) id: 5fa7fae13e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:NamE.薆 | 作成日時:2017年10月27日 19時

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