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カルテ48枚目【暴走】 ページ14

「彼女の異能の弱点は、発動対象が自分だけである。そんな簡単な副作用で済む異能力じゃない。下手をすれば無敵になれるこの異能にはそれ以上の副作用があるんだ」




首領が、部屋に一歩入り込む。
苦しげな声がやんだ。





「干渉を遮断するにはいわば、バリアが必要だ。そのバリアは基本的に、彼女の皮膚に沿って貼られている。そのバリアが広がっていくのがこの異能の暴走の本質だ」




首領がある一定の位置に行く。
私もそれを覗き込むと、少し離れた先に大庭医師が座っていた。膝を抱え、ゆらりと首領を見上げて首を傾げる。
首領が宙に触れると、何かに弾かれるかのようにその手が不自然に止まった。






「バリアは彼女の異能である干渉遮断の膜が広がったものだ。だからこうして広がっているものに人間が挟まれれば、壁とバリアの圧に迫られてぺしゃんこになる。それが普通の街中、本部、店、家なんかで起こったら確実にけが人が出る。
外部になんて出たら、急激にバリアが広まった場合に死者が大勢出る。
だからこうして異能の暴走期間は、この子を隔離しているんだ」





話しながら首領は、自分の腕を軽くメスで切った。流れ出す血を見つめ、医師は手を伸ばした。
首領の腕を掴んで自分の口元に押し付ける。私の方をちらりと見て、乱暴に無造作に首領の血を吸った。





「首領!!」



「……バリアの中には決まった人しか入れない。彼女の精神が保たれている間は、この異能は僅かながらに制御できる。だが精神が持つのは長くても1日だ。それ以上は見込めない。
だから、君が行くんだ」




ここまでの話を整理すると。
医師の異能による暴走は、バリアを拡張させる点が大きい。拡張したバリアに押しつぶされる可能性もありろくな対処ができない。
私の異能無効化を使う以外に彼女に干渉する手段がない。だから私が適任。暴走しているということは常に異能が働いているということ。食事を与えないと体力がなくなる。よくて気絶、悪くて死ぬかもしれない。それを阻止するのが私の任務、というわけか。





「…………了解しました」




「うん。……良い報告を期待しているよ」





首領が腕を医師から離すと医師はまだまだ足りないとでもいうように手を伸ばしている。
言葉もろくに話さずただ血を求めているだけのその人が、なんだか助けを求めている子供のようにに見えた。

カルテ49枚目【人生】→←カルテ47枚目【任務】



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NamE.薆(プロフ) - 赤珠(元 チョコうさ。)さん» もしよろしければリクエストォォォ!! (2018年1月1日 22時) (レス) id: 71af860354 (このIDを非表示/違反報告)
NamE.薆(プロフ) - 赤珠(元 チョコうさ。)さん» そ、そ、そ、そのつもりでございましたぁぁぁぁあ!!!!やりますやります!頑張ります! (2018年1月1日 22時) (レス) id: 71af860354 (このIDを非表示/違反報告)
赤珠(元 チョコうさ。)(プロフ) - 続編…だと…!?この流れからしてあのパターンだよね?うわあああああああああ!!もしよければ与謝野さんと話しして欲しいですー!!!!!! (2018年1月1日 21時) (レス) id: 5fa7fae13e (このIDを非表示/違反報告)
赤珠(元 チョコうさ。)(プロフ) - ぬおおおおおおお!!!!…。←語彙力 控えめに言って…神です。(真顔) (2017年11月13日 8時) (レス) id: 5fa7fae13e (このIDを非表示/違反報告)
赤珠(元 チョコうさ。)(プロフ) - NamE.薆さん» なぬ…!?…。死亡フラグが思いつかねぇ。← (2017年11月5日 10時) (レス) id: 5fa7fae13e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:NamE.薆 | 作成日時:2017年10月27日 19時

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