カルテ36枚目【三年】 ページ2
「っ……ん………いたっ」
『我慢、して』
「ひっ!ぅっ………い、いたいっ」
『………っ、ん。もうちょっと』
「ひぁっ………せ、せんせぇっ」
『…………はい、終わり』
みなさん、何を考えましたか。
これは単なる予防接種ですよ。
私は一つため息をついてまだ痛む腕を押さえる。予防接種はあんまり痛くないなんて思っていたが、普通に痛いのを三年前に知った。
『お疲れ様』
微笑んで眼鏡を押し上げるのは大庭医師。
いつものように妖艶な瞳で私を見ている。大庭医師と出会って三年。
私があることを始めてから三年も経った。
「……ふぅ。痛いのはどうにかならないんですかね?」
『無理だよ。痛みは生の象徴だからね』
さて、と医師が私の手を引く。
私もその手に抗わず、大庭医師に体を寄せる。
今日の文の予防接種は私で終わり。もう仕事はない。此処からは、私の仕事が始まる。
『お願いできる?』
「……あんまり痛くしないでくださいね」
そう言って私は包帯を解く。首筋に見える死に際の痕。肩にかけて見える、吸血痕は消えそうになって消えない。
医師は、なるべく努力するよ、なんて言いながら微笑んで、包帯の解けた私の首筋に唇を寄せる。
「んっ……は…っぁ」
三年。
長いようで短い三年。
まだまだ続くだろうこれに、私は少し酔わされて。最近は、これが心地よく感じて、欲しがっている自分がいる。
絶対言わないけど。
『やっぱり、無理』
「えっ、ひあっ!!」
舌が入ってくる。
傷口を舐める舌が熱くて、思わず身を寄せる。
でも、それだってもう慣れてきて、どうすればいいかもわかる。
でも、体はまだまだ慣れないようで、こんなことで声は上がるし、体は変に反応する。
「あっ、っ………も、いい、だろ」
口調が抜けて、乱暴になってくる。
こんな言葉を使うのは医師にだけ。
『だめ』
「いっ、……あ、っ…はぁっ、んっ」
乱暴な言葉の抵抗もこの人にとっては「もっと」に聞こえるらしい。
そんなわけないのに。だってこんなにも痛い。
痛い、のに。
『………もっと欲しそうな顔してる』
そうして心を見破られれば、私だって甘えてやる。
「っ……も、ちょっと……だけ、です……よ、ぁっ」
医師はまた私の傷口に触れる。
そうして、いつか心にまで入ってきそうで、いつも少しだけ怖くなるんだ。
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NamE.薆(プロフ) - 赤珠(元 チョコうさ。)さん» もしよろしければリクエストォォォ!! (2018年1月1日 22時) (レス) id: 71af860354 (このIDを非表示/違反報告)
NamE.薆(プロフ) - 赤珠(元 チョコうさ。)さん» そ、そ、そ、そのつもりでございましたぁぁぁぁあ!!!!やりますやります!頑張ります! (2018年1月1日 22時) (レス) id: 71af860354 (このIDを非表示/違反報告)
赤珠(元 チョコうさ。)(プロフ) - 続編…だと…!?この流れからしてあのパターンだよね?うわあああああああああ!!もしよければ与謝野さんと話しして欲しいですー!!!!!! (2018年1月1日 21時) (レス) id: 5fa7fae13e (このIDを非表示/違反報告)
赤珠(元 チョコうさ。)(プロフ) - ぬおおおおおおお!!!!…。←語彙力 控えめに言って…神です。(真顔) (2017年11月13日 8時) (レス) id: 5fa7fae13e (このIDを非表示/違反報告)
赤珠(元 チョコうさ。)(プロフ) - NamE.薆さん» なぬ…!?…。死亡フラグが思いつかねぇ。← (2017年11月5日 10時) (レス) id: 5fa7fae13e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:NamE.薆 | 作成日時:2017年10月27日 19時