前奇談第6話 無効化 ページ7
それから数分して、本当にもう一つ、銀の盆に洋食を乗せてその人はやってきた。
時間は約4分。それなら隣に部屋でもあるのだろうか。隣室があの人の部屋だとするなら直ぐに対処される。いつでも私を殺せるというわけだ。
『さ、食べなよ』
私の前にあぐらをかいて座りながら、肘をついて私をニヨニヨ眺めている。
食事に毒を入れるのは一般的。この人の目的を推測し、そこから考えるならここで殺すなんていう真似はしない。
完全に安心したわけではなかったが、少しずつ食事を口に運んだ。
「しょっぱい」
『ボクは甘いのが苦手だ。塩気のあるものが好みだからね』
あくまで否定はしない。
それどころか己を肯定し、さも当然のようにいう。実質、この空間内ではこの人に逆らうのは利口な考えではない。
いわば、生かすも殺すもこの人次第ということになる。
「ふふっ」
思わず笑みがこぼれた。
生死を他人に委ねられる日が来るなんて、しかもこんなに早く。
なんたる幸運。マフィアに入って最初の利点だったように思えた。
『___________________笑うな』
突然、鋭い眼光に睨まれた。
途端に体が止まった。なんで、動けない。指一本も動かせない。
体が、固まっている。
その眼光から目を逸らすことができない。
『もう一度言うけど』
肩を押され、床に手をつける。
そのまま首に手を回されゆるく力を込められながら重力の流れに沿って、床に体を押し付けた。
ギリッと骨が軋んだ。
「っぅ」
『此処ではボクがルールだ。ボクが正しいんだ。だから君はボクに従わなければならない。
一つ、此れから君は絶対に笑ってはいけない』
食事の乗った盆が音を立てて散らばり、床に汚い模様を作った。人間な死にそうになると抵抗するものなのだと思った。
実際、私も、緩い力を振りほどこうともがいていたし、首に回されていた手を引き剥がそうとした。
しかし、それには圧倒的に力が足りなかった。何をするにも、ひ弱な私だ、この人の片手ほどの力もない。
『命令だよ』
命令、その言葉が頭の中をループした。
瞳が赤く赤く染まり、黒い文字列が陣のように広がり、しかし、それはやがて割れるように砕けて消えた。
『っ、消えた………!?』
この時、私は初めてこの人の驚愕した顔を見た。
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486 - ビビりまくりの太宰さん凄く可愛いです。こういった小説をあまり見掛けないので、この作品を見付けた時静かに天を仰ぎました。素晴らしい小説を有り難う御座います。(ボソッ) (2021年12月27日 23時) (レス) @page23 id: 95e132c874 (このIDを非表示/違反報告)
コノン - リクエストで太宰さんが夢主に悪戯(イタズラ)をしてみたをお願いします!! (2018年5月11日 21時) (レス) id: a71a5af7c9 (このIDを非表示/違反報告)
リネン - リクエストで【夢主ちゃんが安吾に会った】をお願いします( *´艸`) (2018年5月11日 21時) (レス) id: a71a5af7c9 (このIDを非表示/違反報告)
夏目(プロフ) - 何コレ太宰さん天使じゃん!これからも更新頑張ってください!応援してます! (2018年5月7日 20時) (レス) id: 6f15b8d456 (このIDを非表示/違反報告)
七葉 - ビビってない(ビビってるけど慣れてきている?)太宰さんもいいけどビビりな太宰さんもいい!やはりビビりですな!前奇談も頑張ってください!応援してます! (2017年10月31日 23時) (レス) id: c2da3d0588 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:NamE.薆 | 作成日時:2017年9月3日 20時