前奇談第5話 1/6 ページ6
『やっほー!オサム君、元気にしてた?』
数時間前に出て行ったその人が私の前にまた現れた。銀のぼんに洋食をのせて持って来たが、その人の片手にはそれとは似つかないものが握られていた。
「拳銃」
黒いフォルムのリボルバー式拳銃。
そこには一発だけ空白があった。
『今から君を此れで撃とう』
笑って拳銃を構える。
手に持っていたぼんをそっと床に置いて、視線は私から離さずに拳銃を片手で構えていた。
「…………………」
『…………本当に撃つよ』
両手で再度構えなおし、また照準を合わせる。
ゆっくりと殺意を出しながらまた、挑めるような目つきを向けながら、その長い時間を過ごした。
「……………撃たないの」
その言葉と同時に拳銃が鳴った。
火をあげ、私の前から銃口をそらさないままに。
しかし、
『………残念。はずれだ』
まさかの空白部分にあたり、球は吐き出されず、無論、私の頭蓋骨を割って脳に進入し、その生命を途切れさせることは、なかった。
『……君、怖くないの』
疑問符のない質問に、立ったままで答える。
「怖いのは、死を恐れているからだ」
その答えに、その人は驚愕したように目を見開いて、それから楽しそうに笑った。
『死を……っっ、確かにね。恐れていなければ、銃口が目の前にあっても問題ない』
くくくっ、と笑いながら、扉の方へと引き返していく。なんだろう、このデジャブ。
『待ってなよ?ボクも此処で食べる』
此処で………?
常に監視するためか、否、意味はない。
「なんで………」
『うん?……んー、ボクがそうしたいからかな』
まさかの我儘だった。
この人は私の思うよりも子供で、無邪気で、寂しがりやなのかもしれない。
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486 - ビビりまくりの太宰さん凄く可愛いです。こういった小説をあまり見掛けないので、この作品を見付けた時静かに天を仰ぎました。素晴らしい小説を有り難う御座います。(ボソッ) (2021年12月27日 23時) (レス) @page23 id: 95e132c874 (このIDを非表示/違反報告)
コノン - リクエストで太宰さんが夢主に悪戯(イタズラ)をしてみたをお願いします!! (2018年5月11日 21時) (レス) id: a71a5af7c9 (このIDを非表示/違反報告)
リネン - リクエストで【夢主ちゃんが安吾に会った】をお願いします( *´艸`) (2018年5月11日 21時) (レス) id: a71a5af7c9 (このIDを非表示/違反報告)
夏目(プロフ) - 何コレ太宰さん天使じゃん!これからも更新頑張ってください!応援してます! (2018年5月7日 20時) (レス) id: 6f15b8d456 (このIDを非表示/違反報告)
七葉 - ビビってない(ビビってるけど慣れてきている?)太宰さんもいいけどビビりな太宰さんもいい!やはりビビりですな!前奇談も頑張ってください!応援してます! (2017年10月31日 23時) (レス) id: c2da3d0588 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:NamE.薆 | 作成日時:2017年9月3日 20時