前奇談第15話 間違えたようだ ページ17
「中也はッ!」
思わず声が出てしまった。
私の相棒。中原中也。重力を操る異能を持ち、私と同い年の嫌な奴。
でも、一番話がわかる奴。
『……………必死そうだね』
「っ………」
津島さんが怪しげに笑った。
彼奴は何も悪くない。
彼奴にこの人の所業は酷だ。
『中也君はさぁ、君の大切な人?』
「…………」
はいと答えて、大切なら奪ってやるとか言われてもポートマフィア側からして困るだろう。
いいえと答えても、大切じゃないなら消していい、とか言われたらどうしようもない。
答えられない質問は苦手だ。
『大切な人かどうかもわからないか』
「っ、中也は」
「中也は、私のことが嫌いだ。
だから私が死んで真っ先に喜ぶのは彼。
でも、それは建前上だ。彼は私のことを大切に思ってくれているだろう。もし、彼を捕まえて、同じことをするつもりなら、私の死体を見せればいい」
自分から中也のことを話すのは初めてだ。
中也は私を嫌っている。そう、思ってる。あって目が合った瞬間に、私も彼も、こいつとは合わないって思った。
だからこそ、相棒になれたような気がする。
合わないからこそ、埋め合えてる気がする。
だから、中也は絶対にこさせてはいけない。
私がこの人を引き受けてやる。
私が背負ってやる。
『…………君は何か勘違いをしてるね』
津島さんが机から離れて、ベッドに座り込む私に近づいた。強く肩を押し、ベッドに乱雑に私を押し倒す。乱暴な目が、私を強く縛り付けた。
『気に入らないんだよ』
そう呟いて思いっきり顔を殴られた。
少しの間、何をされたかわからなかった。
痛い。ヒリヒリとした痛み。
頬に走った痛みの先には、怖い目をした津島さんがいた。
「ひっ」
声に出してこの人に恐怖した。
怖い、目が怖い、痛みが怖い。急な変貌が怖い。この人は私に依存させたいんだと思っていた。だから痛みはあまり使わないだろうと。
間違っていたんだ。
初めて間違えたんだ。
『君はもっと、他人に興味がなくてさっ!自分だけを考えてっ!常に最適な行動するッ!
…………利口な子だと思ってたよ』
なんどもなんども殴ってくる。
防ぐ腕が押さえられている。初めてこんなに人が怖く感じた。
それなのに、津島さんが私を殴っているのに、津島さんの方が泣きそうで、それでいてとても嬉しそうだった。
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486 - ビビりまくりの太宰さん凄く可愛いです。こういった小説をあまり見掛けないので、この作品を見付けた時静かに天を仰ぎました。素晴らしい小説を有り難う御座います。(ボソッ) (2021年12月27日 23時) (レス) @page23 id: 95e132c874 (このIDを非表示/違反報告)
コノン - リクエストで太宰さんが夢主に悪戯(イタズラ)をしてみたをお願いします!! (2018年5月11日 21時) (レス) id: a71a5af7c9 (このIDを非表示/違反報告)
リネン - リクエストで【夢主ちゃんが安吾に会った】をお願いします( *´艸`) (2018年5月11日 21時) (レス) id: a71a5af7c9 (このIDを非表示/違反報告)
夏目(プロフ) - 何コレ太宰さん天使じゃん!これからも更新頑張ってください!応援してます! (2018年5月7日 20時) (レス) id: 6f15b8d456 (このIDを非表示/違反報告)
七葉 - ビビってない(ビビってるけど慣れてきている?)太宰さんもいいけどビビりな太宰さんもいい!やはりビビりですな!前奇談も頑張ってください!応援してます! (2017年10月31日 23時) (レス) id: c2da3d0588 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:NamE.薆 | 作成日時:2017年9月3日 20時