十二発目 ページ14
心地よい音に目が覚めた。
ふわりとした感覚に、夢心地になる。
『……………っ、ここ、は』
第一声は枯れていた。
そこまで叫んでいた何かがあったか。
何か…………?
『ぁ、っ、ちゅ…や、の………』
コートが見当たらない。
立ち上がったはずなのに視界が低い気がする。
目の前がよく見えない。
「____________ん」
小さな声がした。
すぐ後ろから。
『だれ……』
後ろを振り向いても、ただ紅い塊があるだけだ。
紅い、塊。
「………さ、ん」
『う、そ………でしょ。ねぇ』
目の前が鮮明になってくる。
私の目がおかしかったのだろう。
紅い中に黒が見えた。
そして僅かに痙攣し、震え、息も絶え絶えに血を流している。
「………薬、菱さん」
『芥川______』
私の背中に捕まっていたであろう芥川がずるりと崩れ落ち、地面にうずくまった。
周りに人の気配はない。
『ねぇ、なにが………なにが、あって』
私の声が震えるのがわかる。
周りにある紅いものたちは、だれも彼も動かない。
『ゃだ………っ、なんで』
「「「お前のせいだ」」」
何人もの声が重なって聞こえた。
私を責める声…………
「お前のせいで、僕は」
『っ、違っ!』
芥川がもみあげを揺らし、睨む。
なんで、私………私のせいじゃ…
「にひひっ、君が愚図なばかりに、何人も死んでいった」
『厭っ!!やめ、て………っ』
敵のボスが嗤う。
指を刺さないで、私は、私、のせい…
「____________お前が」
中也が、顔の見えない彼が私を指差した。
やめて、やめてよ。
聞きたくない。
「全ての元凶だ」
『やめてっ!!!』
ひび割れる音。
降ってくるガラスが肌を傷つけた。
彼の面影が消えて無くなっていく。
厭だ、やだよ。私がなにをしたっていうの!?
私は…………私は………
《君は弱い》
とある女性が私と目線を合わせて、強く言った。
《それじゃあ、なにも守れない》
何も、守れない。
芥川も、中也も、梶井も、広津さんも、
みんな、守れない。
『__________________!!!』
言い表せない悔しさと怒りと、
腹立たしさと、悲しみが、声にならずに弾けた。
「A!」
大切な人が私の名を呼ぶ。
目の前が白く、溶けていった。
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遥香 - 面白いです!頑張って更新してくださいね!ずっと待ってますんで☆ (2017年9月6日 21時) (レス) id: 7ef9178f07 (このIDを非表示/違反報告)
NamE.薆(プロフ) - 晋陽さん» 頑張りますっ! (2017年8月31日 20時) (レス) id: 71af860354 (このIDを非表示/違反報告)
晋陽 - 続きが気になります!更新頑張って下さい! (2017年8月31日 17時) (レス) id: 8ef45f8c23 (このIDを非表示/違反報告)
NamE.薆(プロフ) - 滓跂さん» 頑張ります!! (2017年8月15日 22時) (レス) id: 71af860354 (このIDを非表示/違反報告)
滓跂(プロフ) - とっても面白いです!続き、待ってますね! (2017年8月15日 20時) (レス) id: 33d499f1b1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:NamE.薆 | 作成日時:2017年8月15日 16時