七夕 9約束 ページ9
『これが、約束の笹です』
蛍の光が浮かんでは消える。
小川の上を小さな橋が架かり
その前に、あいつは立っている。
『昔____幼いあなたが私に言った約束です。
もし、また会えたら、此処で、大きな笹を一つください、と』
《また、会えたら。こんどは大きなこの笹をくれ!》
《いいけど、なんで?》
《こんどは、おれがアネキの願いを叶えるからだ!》
『あなたは、覚えてないかもしれませんが。
私はすごく嬉しかった』
笹を渡しながら、嬉しそうに、幸せそうに笑う。
それを受け取る。
そう、そうだった。
前に両親とこの七夕祭りにきて、
迷って。
そこにあった笹に、願い事を書いたんだ。
母さんと父さんに会えますように
そんなことをかいて。
そうしたら、こいつに会って、
話して、遊んで、また会う約束をした。
そんなのすっかり忘れて、次の年からはもう行ってなかったんだろう。
それにヨコハマから京都も距離がある。
「………俺」
笹を受け取りながら、まっすぐ前を向いて告げた。
「来年もまた、此処に笹をもらいに来る。
来年もまた、お前に会いに来る」
それは、約束。
小さな時と同じように、小指を絡めて、
ゆっくり振って、歌う。
「はりせんぼんのーます」
『ゆびきった』
そうすると、また泣く。
今度は笑いながら泣いている。
「約束だ」
『うん゛、やくそく、する』
涙をポロポロ溢しながらも話す姿は昔と変わらない。
『あと、もう一つ、隠してることがあったんです』
涙を拭って、俺を見た。
青い瞳にだんだんと星が浮かんで来る。
『私、ベガって名前じゃないんです』
それは、なんとなくわかっていた。
昔の俺の記憶が名前を呼んでいた。
「A」
そう呼ぶと、驚愕して、それからまた笑った。
『はい!』
まだまだ話していたい、そう思うと。
「________________ッ!?」
急に、意識が歪み始めた。
目の前が暗くなる。
「ぁ………て」
『中也さん_________またね』
楽しみにしている、というようなその笑みを最後に俺の意識は途切れた。
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NamE.薆(プロフ) - 霜月白雨@寂しいさん» 頑張ります!!! (2017年7月15日 21時) (レス) id: 71af860354 (このIDを非表示/違反報告)
霜月白雨@寂しい(プロフ) - とてもいい物語ですね! これからもがんばってください! (2017年7月15日 21時) (レス) id: c62dc48e07 (このIDを非表示/違反報告)
NamE.薆(プロフ) - 和さん» あ、あ、ありがとうございます!! (2017年7月15日 14時) (レス) id: 71af860354 (このIDを非表示/違反報告)
和(プロフ) - ありがとうございます!!! (2017年7月15日 11時) (レス) id: 70dae8966d (このIDを非表示/違反報告)
NamE.薆(プロフ) - しゅうさん» 有難うございます!!何かイベントがあった時は書こうかと考えております (2017年7月8日 23時) (レス) id: 71af860354 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:NamE.薆 | 作成日時:2017年7月7日 22時