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A「あれ…」
ソファで眠ってしまっていたようだ。
ピンクの毛布が掛けられていることに気付く。
A「神威？神威どこ！！」
神威「なーに？」
ドアからひょっこりと顔を出した神威に安心する。
神威「見て、大収穫」
ニイっと嬉しそうに野菜を差し出す姿に泣きそうになった。
A「…昨日の話だけど」
神威「起きて早々重たい話はやめようよ」
野菜を洗っている神威の顔は見えなくて、いつも通りの声色でそう言う彼の感情は読めない。
A「じゃあ、これ独り言ね。昨日いっぱい考えた。あなたがここを去るのが一番街にとって平和的な解決なんだと思う。でも、私は護る人間じゃない。救う人間だから、護れなくても、いい。神威とずっとここに居たい」
水の音に掻き消されるような小さな声で淡々と声に出した。
神威「……火使えないからこのままでいいよね」
本当に聞こえてなかったのか、なんの反応もなくテーブルに野菜を並べて、そのままポリポリと食べ始めた。
神威「食べ終わったら、Aも来てよ。見せたいものがあるんだ」
A「うん…」
いつもと変わらない朝。
事の重大さは分かって欲しいけど、やっぱり神威はあっちに行くつもりはないのかな。
みんな、ごめんね。
でも私はこうしたいの。
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A「あ、これ人参？」
神威「そう、凄いでしょ」
へへんと得意げに見せられたそれは、綺麗に耕された畑で伸び伸びと育っていた。
A「野菜にも花言葉があってね、それが素敵で選んだの」
神威「へえそうなんだ」
A「うん。幼い夢、なんだって。色々解釈はあるだろうけど、子どもの頃で止まったままの家族としての夢が、花開いた時に叶うといいなって。本当は春に植えるのがいいらしいんだけどね」
神威「…」
A「ガキンチョには、興味無い話だったかな？」
ヘラッと笑うと、強く抱き締められた。
神威「…ありがとう」
A「え、なになにどうしたの」
神威「何でもないよ。ただこうしたかったんだ」
抱き締め返すと、より一層力が強くなる。
あぁ、なんだろうこの気持ち。
心が熱い。
能天気で、優しくて、自分に負けそうな時も歯食いしばって堪えて、私の隣で笑ってくれる神威が、愛おしい。
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作者名：ぺち | 作成日時：2021年2月8日 12時
