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A「神威、風邪引くよ」


毛布もかけずに手を握りながら眠っている神威を起こす。


神威「ん…A!傷はどう?痛むの?」

A「あ、うん、痛い…」

神威「病院行こう」

A「そうだね…ははは、医者なのに情けない」

神威「そんなこと言ってる場合じゃないだろ、ほら、乗って」

A「いやいや、タクシー呼ぶから」

神威「そんなもんより俺の方が早いよ」


えぇ…まぁ暫く休診するし、キッチンの修理代もあるしお金かからないのは良いけども。


神威「じゃあ、しゅっぱーつ」

A「うお?!」


片手で傘を持ちながら、大人一人おぶって軽々と屋根から屋根へ飛び移っていく。


A「人がゴミのようだ…」

神威「なんだっけそれ」


初めて見る景色に、痛みも忘れてわくわくした。


A「夜兎って便利だねぇ。来世は夜兎になりたい」

神威「便利って理由でなりたがる人なんていないだろうね」

A「あ、神威そこの病院」

神威「はーい」

A「…神威?え、ちょっと、ここ入口じゃない!!窓ー!!!!」


叫ぶ声に耳も貸さず診察室のガラスを蹴破り侵入すると、顎が外れるくらい驚くお医者さん。


神威「Aのお腹、穴空いてるんだ。診てやってよ」


ポカンとする医者を他所に、その場にいたお局っぽい看護師さんが神威をこっ酷く叱った。




「…うん、血も溜まってないし運良く急所はズレてるから簡単な手術で大丈夫です。早い方がいい、これからします」

A「よろしくお願いします」

「では、準備が整い次第看護師が呼びに来ますんで」

A「はい」

神威「……あの怖い看護師さんがまた来るのかなぁ?」

A「誰でも怒るわ!病院にカチコミみたいな登場するなんて!」

神威「俺は1秒でも早くしただけなのに」


シュンとする顔はちょっと可愛いけど、手術代と共に請求されるであろう修理費に溜息をついた。

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作者名:ぺち | 作成日時:2021年2月8日 12時

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