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目を覚ますと、しっかりと抱き着き私の首元に顔を埋める神威の姿。

子どもが母親にするようなその仕草に嫌悪感はなく、母性に似た感情が芽生えた。


A「私はどうも、歳下に甘いな」


顔にかかった髪を避けてあげるとくすぐったそうに微笑むその顔に、胸が温かくなった。

今日は休みでは無いので、起こさないようすり抜けて準備を始める。


病院のある1階へ降りると、カランと音がした。


A「あ、ごめんなさいまだ準備終わってなくて。ちょっと散らかってるけどどうぞ」

神楽「…診察じゃないアル。遊びに来いって言ったのは美咲でショ」

A「来てくれたんだ。待ってて、今神威起こしてくる」

神楽「寝てるならわざわざ起こさなくていいアル」

A「えぇ?なんで?」

神楽「それはそれで都合がいいネ」


どこか切なそうなその表情に、何か言いたいことがあると思った私は座るよう促す。


神楽「…これからどうなるかは分からないけど、こういう道を歩んでいたことは知っておいた方が良いと思って話すネ」

A「うん」

神楽「私達は夜兎アル。戦場の上でしか生きられない、獣のような種族アル。私はそれに抗って生きてきた。けど、神威はそれに従順に生きてきたアル。お前が思っているよりも、アイツは恐ろしい奴ネ」

A「昨日調べたから知ってるよ。多少は」

神楽「アイツは、パピーを殺そうとして、左腕を奪った。病気のマミーも置いて出ていった薄情者ネ。そのマミーも、今はお星様になったヨ」

A「うそ…」

神楽「弱い者には興味が無い、強い者は自分が殺らないと気が済まない。そんな、血に飢えた獣だったアル。だから、あんまり信じすぎない方がAの為ヨ。全てを思い出した時、元に戻ったらお前は殺されるかもしれないアル」


自ら家族を捨て、その家族に焦がれる神威。

夢にまでみたお母さんはもういない。


これを知ったら、どうなってしまうだろう。


A「…でも、神威を助けたこと後悔してないし、今はそれなりに楽しいよ。なんか弟みたいでさ」

神楽「私は伝えたアルよ。あとの事は自己責任ネ」

A「分かってるよ」

神威「A?誰と話して………」

A「あ…おはよう。神楽ちゃんが遊びに来てくれたよ」

神楽「……」

神威「……」

あんな話をしていたからか、神楽ちゃんは昔を思い出したかのように悲しげな顔をしていた。

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作者名:ぺち | 作成日時:2021年2月8日 12時

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