ひと匙の幸せ【衣更真緒】

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「 …ははっ！ なんだよそれ！ 」

「 は、はぁ！？ 笑うところじゃないんだけど！ 」





人が精一杯 頑張ったのになんてやつだ！

ふてくされる私に、衣更は目尻に溜まった涙を指で拭ってから、「 悪い悪い 」と尚も笑い続ける。





「 いや、一体 何を怒鳴られるのかと思ったら、お前さあ…。んな可愛いこと言うなよ 」

「 か、かわ…！？ 」

「 そんな気にすんなよ。お前が本気で言ったんじゃないってことくらい、分かってるからさ 」





そして自然な動作で伸ばされた手がぽんぽんと頭に軽く触れたかと思うと、そのまま優しく撫でられた。

数秒はされるがままだったけど、しばらくしてハッとなり、手をはたいた。





「 とにかく言いたいことは言ったから。私はこのままここで寝るけど、あんたは早く戻ったら？ 昼休み、終わるよ 」

「 いい天気だもんな。俺も寝よっかな〜 」





そう言ってその場で仰向けに寝転がる衣更は、既に瞼を閉じていて、今にも眠ってしまいそうだ。

いやいや。
授業、遅刻するよ。





「 一時間くらいサボっても平気だろ。次は佐賀美先生だし、それにほら 」

「 何よ 」





むくりと上半身を起こした衣更が、無邪気に笑う。





「 もうちょっとだけ月城といたいしな 」

「 っ、さ、…さっさと寝ろ！ 」





私もその場に寝転がり、すぐさま視界をシャットアウトした。

もちろん衣更に背を向けたが、ピタリとくっついて来た体温には気が付かないふりをした。





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