いや、ただ偶然出会っただけだけど。【灰谷蘭】

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夢を見た。
…夢だって思い込むことにする。…怖いから。




蘭に彼女が出来て
もうこれからずっと、一緒には居られなくなる。


気持ちを伝えられないまま


終わる





…そんな夢。









『…ら、ん』


目を開けると部屋はシンとしていて。



机に置いてあったトレーがなくなっている。


あれ、蘭に作ってもらったお粥って夢だったのかな。




余りにも静かで、さっきの夢を思い出す。





……人って、風邪で寝込んでたりしたら
やっぱり人肌が恋しくなるものなんだなって。

特に、好きな人。




『…らん？』



布団から出て、フラフラと蘭の姿を探す。


おでこに違和感があって、
触れてみると冷えピタが貼ってあった。



…蘭が貼ってくれたんだろう。
夢じゃなかった。



じゃ、彼はどこに行ったの？





『蘭、』



キッチンにもいない、
脱衣所にもいない。

つか、もし蘭が脱衣所にいて着替えの最中だったら
私ただのヤバいやつじゃん。変態じゃん。

着替えるの待ってましたー！ってか？


……。





『…竜胆もまだ帰ってきてないの？』



電気はついていなくて、
やっぱり2人とも居ないんだって事がわかる。



ふと視線をずらすと、
椅子の背もたれに蘭の服が適当に掛けられていた。





着替えてどこかに行ってしまったんだろうか。



『…』




好奇心から、その服をそっと手に取り
ソファーに寝転がった。




『蘭の優しいにおいがする』



香水の香りも少し移ってる。



シワにならない程度に抱きしめながら目を閉じた。
…こうしていると、1人で寝るよりかなり安心する。




決して私は変態ではない。

ただ寂しさ故に蘭の香りがする服を抱きしめてその寂しさを紛らわすという、最終手段。(何の？)



こんな姿蘭に見られてしまえばまじで終わる。
世界が終わる。


でもやめられない。









…そんな状態でずっと横になっていれば
ウトウトもするだろう。



瞼が重い。

もうすぐで眠りにつきそう＿＿そんな時だった。





玄関の鍵がガチャッ、と開いた音がした。




もう意識が朦朧としている私はその音すら夢かな？なんて馬鹿みたいな事しか考えられなかった。





ウトウトした目がだんだん冴えてきたとき、
玄関から部屋に入ってきたその人物と目が合った。





「……え」


『…………

……あ。』




蘭だった。



一瞬で目が冴えた。






あっ、私終わった。







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