いや、ただ偶然出会っただけだけど。【灰谷蘭】

３４ ページ36

･


「来たな灰谷ィ…」



さっきまで私の近くにいた男が鉄パイプをポンポン、とリズム良く叩いたあと、2人に近づいていく。


それに合わせて倒れていた周りの不良たちの何人かも武器を手にとって立ち上がった。




「A返せよ」



「それで素直に返すやつがいるかぁ？俺たちはなぁ、この子が1人で泣いてたから助けてやったんだぜ？」



「泣いてた？」





“泣いてた”


その言葉に反応した2人は顔を見合せた。





「んなこと、知ってるけど」


「電話に出た時からアイツ鼻声だったし」


『鼻声言うな』




いや知ってたんかーい。




「泣いてる女放ってどこいってたんだよー
…あいつらお嬢ちゃんが泣いてたこと知ってたんだってさ、可哀想だな？」


『っ、』




男はそう言って私の目の前で屈むと
いきなり私の頭を撫でてきた。


正直言って気持ちわりぃ、タバコくせぇ。




すると突然近くで、ガキィン、と金属音が鳴り響き
音が鳴った方へ目を向けるとそこには金属バットが転がっていた。



しかもそれはこの男のすぐ真後ろ。



「え……」



驚いている男を他所に
「外したな」と楽しそうに笑った蘭。



「あいつらまじでぶっ飛んでやがる…」




まぁ確かに、あのぶつかったときの金属音はかなりのスピードがあったはずだ。


金属バット思いっきり投げるって……ヒィ。




そんな事を言っている間にも、蘭と竜胆は次から次へと飛びかかってくる相手を殴り倒していく。
もちろん鉄パイプで。


これが一騎当千って奴なのだろうか。そんな言葉が似合う人間、初めて目の当たりにしたわ。




そんな2人の勢いに焦ったのか、先程のトップと思しき男が私の顎を片手で強引に掴んできた。




「灰谷！！そっから1歩でも動いみろ！！」


「…、」



ピタリと動きを止めた2人。




「この女がどうなってもいいんだな！？」


「…んな事して恥ずかしくねぇの？」




2人は冷静沈着に尋ねる。

蘭が鉄パイプを肩でポンポンと動かし、
竜胆は反対に鉄パイプを放り投げた。




「お前らがやられてくれるんなら
卑怯な手も使ってやるよ…なァ？お嬢ちゃん

お前らはそこで大事な女がヤられんの黙って見とけ」



「……」





近づいてきた男に胸ぐらを強引に引っ張られ、
制服が少しはだけた。




…また人質かよ、私。




「……あ？なんだコレ」


『…え？』




男は何故か、私の首を見て固まった。






･

３５→←３３

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す