【鬼滅の刃】報われたい 弐【我妻善逸】

５４ ページ5

･




外に出てもやはり、街ですれ違う隊士達にガン見される。



「……いつまで続くんだろうな」



炭治郎がぽつり、呟いた。




「俺が斬ってやるぜ！！！」


「やめとけ！！」



刀に手をかけた伊之助を善逸が全力で止める。

それを見ていた私と炭治郎は苦笑い。





「なぁA、なんで深琴にあんなに恨まれてたんだ？」


『恨まれる、か。なんか言い方怖いな。』


「悪い」



炭治郎がシュンとする。
ごめん、可愛い。




『……深琴もさ、善逸の事が好きだったからね
私が善逸を取っちゃったからじゃないかな』



「女って怖ぇーな」



「こら伊之助、男にも怖いやつはいるんだぞ
例えば信次郎ってやつ」




信次郎、って名前を聞いて肩がビクついてしまった私。アイツにメンタル、ズタボロにされたもんな。





「A、どこかに行く時は俺たちに絶対に声をかけるんだ。分かったな？」


『分かった、パパ』


「違う」





あの時は偶然冨岡さんが居てくれたから私は助かったけど、次はそう上手くは行かない。


捕まったら終わりなんだ。
今の私たちでは適いっこないから…




「……」




ふと視線を感じ顔を上げると、
善逸が私のことをじっと見つめてる。





『どうした？善逸』





善逸に尋ねる。すると、




「……Aちゃんじゃなくて俺を狙えばいいのに。」



なんて。




またそんな事を言う。






『……嫌だよ。私だけで十分』




善逸の傷付く姿、見たくないんだよね
蜘蛛山の事を思い出す。


ボロボロな姿になって毒に侵された善逸を見た途端、
心臓が止まりかけた。



もうあんな思いは絶対にしたくない。





だから、もし今、

“アイツ” が来たら。





『……』




戦うのは私だけでいい。

負けそうになれば私は私を差し出す。

それが1番安全で手っ取り早く、
誰も傷付かない。





「……」



『……善逸？』





善逸がそっと私の手を取って握りしめた。
浮かない顔で。





「……ねぇ、一緒に居てくれる、よね？」




私の考えてることが分かったのか。
とても不安気な表情で私の返事を待っている善逸。




『……居る、よ』





断言は出来ないけど、
できる限り一緒に居たいと思ってるよ。








私が死なない限りは。

５５→←５３

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す