6話 ページ7
仏間の机に父、母、鈴と玲、奏で向かい合わせで座った。
仕事終わりでスーツ姿だったのが幸いした。この大切な場で下手な服を着ていたら、いたたまれないどころじゃ済まされない。
「お茶、持ってきますね。」
気まずい空気に30秒で耐えきれなくなり、少し逃げようと台所へ向かった。
コンロで湯を沸かしている間に急須の準備をしていると、最初は静かだった廊下に次第に声が響いてきた。
コンロの火を止め、居間に行った。
「みくちゃん、ゆずの事一旦外連れ出した方が良いと思う。多分荒れるから」
「分かった、ありがとね。ゆず、ちょっとお菓子とかおつまみとか買ってこよ。ほら、直樹も」
「おう、鈴さんありがとう。」
「落ち着いたら連絡するので。それまで時間潰してきて下さい。夏だからまだ良いけど18時だから気をつけて下さいね」
高野家族を外に逃がし、湯を沸かし直してお茶を淹れた。
しんどくなったら逃げてきていいからね。と伯父夫婦から言葉を貰い、覚悟を決めて襖を開けた。
薄板一枚ずらした内側は想像以上に凄惨だった。
「だからなんで男同士なのか訊いてるんだ!」
「玲さんの事が好きだからです。好きになって、きちんとした健全な段階を踏んで玲さんの了承を貰った上で付き合わせて貰っています。」
激昂した父と、毅然とした態度を崩さない奏。
呆れたような表情をしている母の思考は読めない。
状況が掴めずおどおどしていた玲だけが鈴に気づいた。
そのまま机に置いたら畳が水びたしになりそうだったため一度湯呑みを乗せたお盆を部屋の隅に置き、どう動けばいいか考えた。
怒声が響く中悶々としていると、大きな溜息が隣から聞こえた。
母のものだった。
「あのねぇ…だいたい男同士なんて“気持ち悪い”のよ。」
その瞬間、若干熱っぽくなってまともにものが考えられなくなっていた頭がすっと冷えた。
それと同時に、いつも優しくてなんでも受け入れてくれた母から発された半ば差別のような言葉に驚いた。
その戸惑いもあってか、
それと同時に、鈴の中の「何か」が切れた。
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