【d!】絶望的な愛情を【短編集】 (ページ13)

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＿ページ13

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「顔真っ赤やで、大丈夫？」

貴方のせいだよ。そう言いたいけど今のこの支えられている状態に更に頭がパンクしそう。

でも、今私は紛れもなく幸せだ。シャオちゃんと2人きりの空間で、身体が触れ合っている。無理だ、やばい。

もっと支えられていたいけど、時間は有限。握手は絶対しておきたい。

『あの、シャオちゃん…握手、良いですか』

「もちろん、手出して？」

右手を出すと、彼は両手で私の手を包み込んで優しく笑った。…ように見えた。

「Aちゃん、俺のこと大好きやねんな。パッと見たら分かる、他の子とは大違いや。ほんま可愛いし……」

何故か、シャオちゃんの顔が前髪の影に隠れて見えなくなる。

「…俺以外、推したりせえへんよな？」

顔を上げた彼は、表情こそ笑っているものの目に光が差していない気がして。私の手を握る両手に力が込められ痛みで顔を歪めると、手が離れた。

しかしそれらは一瞬の出来事で、気付けばシャオちゃんは元のキラキラしたアイドルに戻っていた。

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その日の夜、私は電気も付けず月明かりだけの部屋でベッドに寝転ぶ。

シャオちゃん、手握ってくれた。身体が触れ合った。一瞬怖かった時もあったけど、それすら私はゾクッとして好きだった。

貴方以外、推せないよ。もう私は貴方しか見えない。貴方になら何だって。

『私の世界は、シャオちゃんだけ居ればそれで…』

そう呟いたその時、窓の外で物音がした。

振り返ると、誰かがベランダの柵に立っていた。月光でシルエットしか見えず、マントがなびいてるのが分かる。

ぼうっとしていると、耳元で声が響いた。

「迎えに来たで、A」

小さく声を上げ後ろを振り返る。そこには黒いシルクハットを深く被った人。しかしその声は明らかに…

見れば鍵が閉まっていた筈の窓はいつの間にか開けられていて、そこから風が吹く。

「俺、最初からAのこと知ってたで。アイドルとしてデビューした時から応援してくれとったよな。毎日俺のために生きて、お洒落とか持ち物とか部屋の家具の色とか俺色に染まっとるのも、全部可愛い。ずっっと前から怪盗(俺)のターゲットになっとるってことも知らずに必死に過ごしとるAもめちゃくちゃに可愛い」

＿Aなら、俺と一緒に来てくれるやろ？
身体も心も全部、盗んで俺だけのものにしたい。

私の答えは、決まっていた。

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