09 ページ9
．
彼女と話しながら城のあちこちを回っていく。
道行くメイドや兵は、彼女の隣に立つ僕に驚いているが、そりゃこの国で指名手配みたいなんされとった奴がこんなお姫様と一緒に居たら「は？」ってなるわ。
「Aちゃんってほんま特別やねんな。歩くだけでみんな避けてくれるやん」
『そういう扱いされるのはあんまり好きじゃないんですけどね…私も普通の人と変わらないのにって思います』
王に溺愛されて幽閉されとる女の子なんて普通やないで。
そう思ったが、この言葉は呑み込んでおいた。
『鬱さんは、どうしてこの城に居るんですか？』
「んーとね、僕コネシマの友人なんよ。そんで訳あってここに住むことになってんな」
『え、王の…？そうだったんですね！良かった、怪しい人じゃなくて…』
分かりやすくホッと胸を撫で下ろす彼女の横顔が綺麗で哀れで、愛おしく思えた。
思わず立ち止まれば彼女も立ち止まり、くるりとこちらを振り返る。
『どうかしましたか？』
こてんと首を傾げるAちゃん。
ひとつひとつの仕草がどうしても可愛い。天使か何かと勘違いしてしまいそうだ。いや、コネシマが悪魔ならば彼女は間違いなく天使だ。可哀想に、僕が今すぐ悪魔の手元から救済しなければ…！
でもあいつに殺されるのは嫌だな！！僕らの関係がバレないようにしないと…今日会ったことも知られたら面倒だ。
「Aちゃん、今日僕と会ったことはコネシマには秘密にしてくれへん？」
『え？』
「ほら、コネシマってAちゃんのこと大好きやろ？僕と会ったって知ったらキレると思うねん」
『大丈夫ですよ、それくらいなら許してくれるはずです。王は優しいので』
そう言って無垢な笑みを向ける彼女に、心の中で頭を抱える。
何も分かっていなさ過ぎる。それくらいで許す訳が無いだろう。あいつは優しいんじゃない、彼女への想いに対して理性が機能していないだけだ。
．
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 340人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
檸檬 - 性癖ドンピシャ。やばい、好きすぎて昇天しそう……あ、おそらきれーい。茶番はさておき、kn王の溺愛（）っぷりも夢主ちゃんが無自覚に堕ちてるところも文章としてのレベルが高くて凄く読みやすい作品になってました！これからも応援します！！（長文失礼しました。） (2021年8月17日 0時) (
レス) id: 92e2da3c03 (このIDを非表示/違反報告)
ぴくぴく - 凄く好みです更新頑張ってください! (2021年8月16日 11時) (レス) id: 27565d6148 (このIDを非表示/違反報告)
懐中電灯 - ん゛ん゛好きです(唐突)更新頑張ってください！ (2021年8月15日 23時) (レス) id: 1e8e7af11e (このIDを非表示/違反報告)
さくらもち - めちゃくちゃ好みの作品です…！作者様の無理のない程度で更新楽しみにしております！ (2021年8月15日 21時) (レス) id: 15807a80a5 (このIDを非表示/違反報告)
ゆるぽろう - ういいいいいい好きです… (2021年8月15日 16時) (レス) id: 7fbb50c056 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：赤月セレン
| 作成日時：2021年8月15日 1時
