08 ページ8
．
この黒い物が何か分からず、そして彼の言ってることも理解出来なくてきょとんとしていると、彼はしばらく黙って私を見た。
何も言わない私に、ふっと笑ったあと突き付けた黒い物を下ろし私の上から退く。
「冗談やから安心しい、って言ってもこれが何か分かってへんみたいやしええか…せやAちゃん、多分暇やろ？一緒に城ん中歩かへん？」
そう言った彼に、しばらく考えたが断る理由が見つからず私は頷いた。
そもそも暇なのは分かりきっているし、城の中を散歩する時はいつも1人だったから誰かと一緒に行ってみたかった。
でもその前に、本当にこの人は誰だ。
『貴方の名前は…？』
「あ、言うてなかった。僕は鬱やで、偉大すぎて大先生って呼ばれててん」
キリッと決めポーズを取る彼を見ながら、私は心の中で鬱さん、とその名を呟く。
すると早速、鬱さんは自然に私の手を引いた。
「行こか、この城案内してや？」
『わ、分かりました』
ベッドから立ち上がり、私は鬱さんに続いて部屋から出る。と、トイレから戻ってきたのか扉を開けると見張りの兵が居た。
「な、なぜお前がここに…！」
部屋に居るはずのない鬱さんが部屋から出てきて驚いたのか、剣に手をかけて彼を睨んでいる。
私は慌てて間に入り、兵に落ち着くよう身振り手振りをする。
『待ってください！えと…私が呼んだんです！心配は要らないですよ』
「な、何と！それは失礼致しました！しかしA様…本当に大丈夫なんですか？」
『はい。私はこれから鬱さんに城を案内してきますね、なので見張りの方は楽にしててください』
でもお手洗いとかに行く時は、ちゃんと代わりを頼んでくださいね？と笑いかけると兵は顔を赤くし慌てて返事をした。
「ええなあ、僕にも笑いかけてくれへんかなあ」
『何か言いました？』
「んふ、まぁ楽しみは取っとく方がええわ」
1人で笑っている鬱さんに、ハテナマークを浮かべるしかなかった。
．
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 340人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
檸檬 - 性癖ドンピシャ。やばい、好きすぎて昇天しそう……あ、おそらきれーい。茶番はさておき、kn王の溺愛（）っぷりも夢主ちゃんが無自覚に堕ちてるところも文章としてのレベルが高くて凄く読みやすい作品になってました！これからも応援します！！（長文失礼しました。） (2021年8月17日 0時) (
レス) id: 92e2da3c03 (このIDを非表示/違反報告)
ぴくぴく - 凄く好みです更新頑張ってください! (2021年8月16日 11時) (レス) id: 27565d6148 (このIDを非表示/違反報告)
懐中電灯 - ん゛ん゛好きです(唐突)更新頑張ってください！ (2021年8月15日 23時) (レス) id: 1e8e7af11e (このIDを非表示/違反報告)
さくらもち - めちゃくちゃ好みの作品です…！作者様の無理のない程度で更新楽しみにしております！ (2021年8月15日 21時) (レス) id: 15807a80a5 (このIDを非表示/違反報告)
ゆるぽろう - ういいいいいい好きです… (2021年8月15日 16時) (レス) id: 7fbb50c056 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：赤月セレン
| 作成日時：2021年8月15日 1時
