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メイドさんに今日のメニューを聞いてから、私は久しぶりに包丁を手に取る。
「気を付けや、ほんま」
『…近くないですか?』
野菜を洗い終わり、いざ切ろうとするが真隣に王が居て手元が少し緊張していた。
ちらりと目線を向ければすぐそこに整った顔があって無駄に心臓が音をたてる。彼が近くに居ることには慣れているはずなのに。
「今更何を照れとんねん」
『っ…』
私の感情が王には筒抜けなのか、そんな言葉が降ってきて自分の頬が赤くなるのが分かる。
しかし、思わず目線を手元から逸らした瞬間、指先に痛みが走り包丁が手から滑り落ちた。
『痛、』
どうやら指先を少し切ってしまったらしい。血が爪の間から滲み出ている。
と、すぐに王は怪我をした私の左手を掴んで自分の方にぐっと引き寄せた。
「おい大丈夫か!痛むか?どの辺や、よう見せてみい…余所見なんかするからや」
『王、私はだいじょ、』
「お前の綺麗な手に傷は付けて欲しくなかったんやけどな、だって世界で1番綺麗な手やでこれ。汚れた空気が入らへんガラスケースに入れときたいぐらいやわ。いやほんまは手だけやなくてお前の身体全部や、Aの全部、全部を俺の」
傷よりも、王に掴まれている手首の方が痛い。私の傷口をただ無表情に見つめながら何かを言っている彼は、やがて私の指先を口元に持っていく。そしてそのまま傷口を舐めた。
驚いて肩が跳ねるが、私の指を這い回る王の舌にぞわりとした感覚が走り、それに耐えるため目をぎゅっと瞑る。
すると舌が指先から離れ、王は目を閉じる私の額にキスを落とした。
「…これで治るで!舐めたら治るってよー言うやろ?」
目を見開いた無表情ではなく、笑顔でそう言った王を見上げていると、扉が開く音がした。
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檸檬 - 性癖ドンピシャ。やばい、好きすぎて昇天しそう……あ、おそらきれーい。茶番はさておき、kn王の溺愛()っぷりも夢主ちゃんが無自覚に堕ちてるところも文章としてのレベルが高くて凄く読みやすい作品になってました!これからも応援します!!(長文失礼しました。) (2021年8月17日 0時) (レス) id: 92e2da3c03 (このIDを非表示/違反報告)
ぴくぴく - 凄く好みです更新頑張ってください! (2021年8月16日 11時) (レス) id: 27565d6148 (このIDを非表示/違反報告)
懐中電灯 - ん゛ん゛好きです(唐突)更新頑張ってください! (2021年8月15日 23時) (レス) id: 1e8e7af11e (このIDを非表示/違反報告)
さくらもち - めちゃくちゃ好みの作品です…!作者様の無理のない程度で更新楽しみにしております! (2021年8月15日 21時) (レス) id: 15807a80a5 (このIDを非表示/違反報告)
ゆるぽろう - ういいいいいい好きです… (2021年8月15日 16時) (レス) id: 7fbb50c056 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:赤月セレン | 作成日時:2021年8月15日 1時