10 束の間の青春 ページ11
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灰谷兄弟が少年院送りになってから数か月。私は見違えるほど平和で素敵な日々を送っていた。
灰谷兄弟に付き纏われていたせいで友達がいなかったものの、最近「あんな奴らに絡まれて災難だったよな…」と男女問わず絡んでくれる人が増えた。もしかして私青春送ってる…!?
別に災難だとか本気で思ったことはないけど『灰谷兄弟怖かった泣き泣き』と言っていたらみんな仲良くしてくれた。え?なにこれ平和すぎない?
そんな感じで灰谷兄弟を忘れかけていたある日の放課後。
道具を鞄に詰めていると前から友人がやってきて名前を呼ばれて顔を上げた。
「今日カラオケ行くよね!」
『行く行く。誰来るの?』
「私ともっちーとリコと…」
『どうした?』
つらつらと名前を挙げていた友人が突然口を開いたまま黙る。疑問に思った私は首を傾げた。
それと同時に後ろから何者かによって首に腕を回されて思わず『ぐえっ』と声が出た。心臓が止まった。反射的に後ろを向こうとすると頭上からハハッと笑い声が振りかかる。
「相変わらず色気のねー声だな」
『ら、蘭』
「よお」
『と竜胆』
「久しぶり」
『お前ら…………坊主似合わな…』
数億年ぶりの灰谷兄弟をまじまじと見て絞り出した言葉がそれだった。言いたいことが多すぎて追い付かない。
しばらく固まっていると「あ、ごめん邪魔したら悪いよね。A、灰谷くんたちと遊んできていいよ」という友人の声にハッと我に返る。
反応が遅かった私は『そんなことないよ!!!』と全否定する前に、友人に「じゃあね!」と手を振られてしまった。いや待てよ。邪魔なのは灰谷兄弟じゃね?カラオケは?私の青春は???
「元気してたかあ?遊びに行くぞ〜」
ニッコリ、怖いほどの笑みを浮かべる蘭に私は頷くことしかできなかった。まさに巨人の恐怖再び、である。頭の中でハゲ(坊主)の項を削いでおいた。
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奏 - どうしてッッッッ!更新停止しちゃうんですかぁ…面白いのに…頑張ってください!更新待ってますからね!o(`Д´*)o (2022年11月22日 16時) (レス) id: 59220ffc51 (このIDを非表示/違反報告)
Ayuri**@作業厨 - すごく面白かったです!更新頑張ってください! (2022年10月10日 21時) (レス) @page11 id: c6d792f109 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:成瀬 | 作成日時:2022年8月31日 17時