63 ページ16
・
別れを告げようとすると｢しばらく一緒にいてよぉ｣と泣きつかれたため、仕方なく『あとちょっとね』って妥協した私を誰か褒めてほしい。
そろそろ睡眠確保したい。
｢てかAめっちゃ強くない！？｣
唐突に目を輝かせながら私を覗き込んできた善逸。ちょ、近いわ。
｢俺一生Aに守ってもらいたいぐらいなんだけど！どう？俺の婿にならない？｣
『は？却下に決まってんだろ』
｢ちぇーっ｣
いやどう考えても嫌だわ。名案思いついた！って顔してんじゃねえよ！
頬を膨らます善逸を一瞥して『……こんな強さいらなかったけどね』と誰にも聞こえないぐらいに呟いたつもりだったのに。
｢え、なんでよ！？｣
こいつは聞き取ってやがった。
｢そのぐらいの強さあったら女の子守れてモテモテなのにぃ〜結婚できるのにぃ〜｣とほざく善逸に呆れ笑いと自分への自嘲じみた笑いが混ざったものが零れた。
この強さは、もとは人を殺めるために培ってきた力だ。
こんな誇れない強さ、いらないんだよ。
意味ないんだよ。
｢A……？｣
『なに？』
静かになったかと思えば、善逸は首を傾げてこちらを見ていた。
いつものおちゃらけた表情は一切ない、真剣な表情。
｢なんか辛いことでもあったの？“音”が、悲しい｣
音？と疑問に思いつつも『辛いことねー、強いて言うならさっき鬼からモテたことかな』とあえていつものノリで答えてみた。
と、さらに顔を曇らせた善逸。
……あー、面倒くさい。
なんとなく分かるよ、善逸がそんなことを聞きたい訳じゃないことは。
でも本音を言うつもりは毛頭ない。
私の発言が嘘か本当か確かめる術なんてないくせに、善逸は私の言ったことを信じていないようだ。
嘘であることが薄々分かっているのか？
……いやあながち嘘じゃないんだけどね！？普通に辛いよ鬼からのモテ期は！
｢……｣
『なんで黙っちゃうんだよ』
｢……、いや、なんでもない｣
何か言いたそうな顔をしている善逸を見て見ぬフリをする。
悲しいことに、もうこういうフリは慣れたもんで自然に出来てしまう。息をするように出来てしまう。
『(なんで善逸がそんな辛そうな悲しそうな顔してんの？)』
別にその理由を知りたいとも思わないけど。
・
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 2049人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「鬼滅の刃」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
リリー - 善逸と面識あるって分かったとき「いやぁぁぁぁあ！！！！善逸ぅぅぅぅぅぅ！！！！(歓喜の叫び)」ってなった。 (2021年6月3日 5時) (
レス) id: 6d42949a76 (このIDを非表示/違反報告)
成瀬(プロフ) - すずなさん» 返信遅くなって申し訳ありません！まさにそれです！！語彙力皆無なのに分かっていただけて嬉しい.........！感激です！！更新頻度とてつもなく遅いですがどうかこれからもお付き合いしていただけるとうれしいです！ (2021年1月1日 11時) (レス) id: 0005ea8ca7 (このIDを非表示/違反報告)
すずな(プロフ) - 面白いです！あと岩の訓練のやつってハンターハンターですか？グリードアイランド編の！ (2020年5月23日 9時) (レス) id: 5706aaffc1 (このIDを非表示/違反報告)
成瀬(プロフ) - ばーどさん» コメントありがとうございます！えっっめっちゃ嬉しいです！！私が悪いんですけど不定期更新のことをポジティブ的に言っていただいて本当に嬉しいです笑不定期ではありますが頑張ります！ (2020年4月15日 17時) (レス) id: 0005ea8ca7 (このIDを非表示/違反報告)
ばーど - このお話大好きです!不定期更新でもいつ更新されるかわからないドキドキ感があるので焦らず更新頑張ってください! (2020年4月12日 22時) (レス) id: 12bcc99cbc (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：成瀬 | 作成日時：2020年1月7日 15時
