嘘九十と八つ ページ48
「何をだよ」
「奥苑 未玖の居場所さ。
ここにいるんだろう？」
「はっ！
アホじゃねぇの！
バイトの居所をどうしてオレが知ってなきゃいけねぇんだよ！」
「へー、まだ強がるんだ。
ではもう一つ、証拠を用意しよう」.
太宰はズボンのポケットから棒状の機械を取り出した。
「探偵七つ道具その二、ボイスレコーダーだ。
ここには興味深い会話が録音されている」
「またねつ造だろ？」
「聞けばわかるさ」
太宰がスイッチを入れる。
機械から老人の音声が流れだした。
『六月十六日？
ああ、夜遅くこの別荘に女の子が入っていったのを見たよ。
そうそう、この写真の女の子だ。
一緒にいたのは葉摘さんのところの息子さんだったと思う』
真依は目を大きく見開いた。
「凄いです！
これ、決定的じゃないですか！」
「あぁ？」
来栖が殺意を込めた視線を真依に送る。
真依は気後れして太宰の影に隠れた。
でも、本当に凄い。
これはもう捕まえてもいいレベルなんじゃないだろうか？
そう思って真依が横を見ると、国木田が硬い表情をしていた。
なぜこんな決定的証拠があるのに、喜んでいないのだろうか・・・？
真依はたっぷり三秒かけた後、ハッとした。
これもきっと、ねつ造なのだと。
こんな音声、簡単に用意できる。
道を歩く老人にお願いして、台詞を喋ってもらえば終了だ。
太宰はスイッチを止め、上目遣いで来栖を見た。
どちらが犯人かわからない、悪い顔つきだった。
「実は見られちゃってるんだよね〜これが。
だから嘘だってバレバレなんだよ。
わかる？
だから早く奥苑 未玖はこの家にいます、って吐きたまえ」
「バカバカしい！
いるわけないだろ、この家に！
そこまで言うなら、証言した爺さんをここに連れてこいよ。
なぁ、本当の証拠ならできるだろ？
ほら、さっさとやってみろよ」
一瞬動揺をさせたものの、来栖の仮面ははがれない。
すぐさま表情を整え、また挑発モードだ。
証拠のねつ造によって多少会話をするところまで持ち込むことはできた。
しかしこれ以上どうやって情報を引き出そうとするのか、真依には見当がつかなかった。
「ご老人の予定は聞いていなかったから、すぐには無理だね」
「そうやって証拠のねつ造を増やすつもりだろ？
ほら、さっさと連れてこいよ」
「その前にトイレに行かせてくれ。
実は我慢してたんだよね」
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作者名：アオ x他1人 | 作成日時：2018年3月6日 23時
