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カンカンと響く踏切の音が頭をぐるぐると駆け巡る


僕は全てを遮断するようにぎゅっと目を瞑った





何も考えたくない、何も思い浮かべたくない





そう考える僕の脳とは裏腹に、僕の心はいつの間にか彼で埋め尽くされていた





“照れてる、かーわい”


溶けてしまいそうなくらい甘い声に真っ赤になってしまった顔を隠した





“ほんとにしちゃったね?”


満更でもなさそうに微笑んだ彼を苦手だと思ったけど
僕だって、緩む頬を頑張って口元に力を入れて我慢した





“嫌なら、嫌って言って”


涙がこぼれ落ちそうになる彼の頬を撫でて、守りたいと思った





“だって、ちねんがそう言ったから”


嬉しそうに髪の毛を触る彼に、僕も嬉しいと思った






彼に抱く感情がだんだんと形になっていく

ずっと放置してきた感情
無視し続けた感情


力を抜いて受け入れれば、思いの外すっと胸の内に落ちてきて

いつかの彼みたいに零れそうな涙を天を仰いで隠した





知念「ね、どうしよ」





隣にいる圭人に空元気に問いかける

涙が零れそうで、前を向くのが怖くて
そのまま空を見上げ続けた






知念「僕、涼介のことが好きだ」






空元気も長くは続かなくて、鼻声に掠れてしまった声

電車が僕達の前に停車して、扉が開いた時






圭人が勢いよく僕の手を引いて、外に向かって走り出した






知念「けいと、講義間に合わなくなっちゃう!」





駅から抜け出して、人通りの少ない路地にたどり着いたとき

ずっと前を向いて走っていた圭人が振り返って、いつの間にか流れて落ちていた僕の涙をすくった






圭人「こんな顔で、行かせるわけないでしょ」






ねえ、この後僕、不思議なくらいずっと涙が止まらなかったんだ


叶わない恋心と、膨らむ僕の気持ちに

彼を想って、圭人の腕の中で声を枯らしながら泣いた





濡れた頬を乾かすように僕の頬をすっと流れる色なき風が、秋の始まりを告げる


一層の事、彼への恋心も吹き飛ばしてくれればいいのに…なんて、思ってみるだけで

きっとどんな手を尽くしても、結局彼を想うことしかできないのだろう

僕の心と秋の空→←.



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ぱっつん - もう終わりですか?続きが見たいです。気長に待ってます。 (2018年6月15日 8時) (レス) id: 392e55b28e (このIDを非表示/違反報告)
あ い り ん ご ? ?(プロフ) - 終わってしまうのですか?( ; ; )続き楽しみにしてます! (2018年5月27日 17時) (レス) id: 2558e0d735 (このIDを非表示/違反報告)
ここみ - こんばんわ。いつもお話楽しみにさせてもらってます!次回作もやまちねちゃんがみたいです!できたらでいいのでよろしくお願いします! (2018年4月4日 18時) (レス) id: 13aa0fd7e6 (このIDを非表示/違反報告)
hall(プロフ) - 凄く面白いです!次回作もやまちねがいいです(><)更新楽しみにしてます! (2018年2月12日 0時) (レス) id: c7890d568e (このIDを非表示/違反報告)
*kanapuchi*(プロフ) - 次の小説もやまちねがいいです!!!!よろしくお願いします。更新、楽しみにしています!! (2017年12月25日 6時) (レス) id: d8ac1fcedc (このIDを非表示/違反報告)

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作者名: | 作成日時:2017年8月26日 21時

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