秘密の逢瀬ってこれを言うんじゃないかな、骸君。 ページ7
左手の中指に嵌めたリングから、ボッと音をたてて炎が燃え上がる。
いつ見ても不思議だが、死ぬ気の炎について理論的に説明はできない。
裏社会ではどうやら私の存在も含め、匣関係のことは七不思議と囁かれているらしいが、私からすれば自分の生体エネルギーを炎に変換して体外に排出できるほうが七不思議である。
おそらく私の一生の課題になるだろう。
「Aさん」
「はい」
障子の外から聞こえた緊張の含む声に返事をする。
自ら採取した炎を特殊な試験管に移し、いくつか並べた。
「…お久しぶりです」
「お久しぶりです」
部屋を見渡した後、ホッと肩の力を抜く彼に苦笑する。
「今日は恭弥君はいないよ」
「み、みたいだね」
アハハと冷や汗を拭った彼が、私の目の前にある数本の試験管に入った炎を見て感心したように頷く。
「凄いですね、体を鍛えているわけでもないのにそこまでの炎が…何より純度がかなり高いですし」
興味深そうに手元を覗き込んでくる。
彼を恭弥君に紹介されてから何度か顔を合わせて彼の研究に参加させてもらっているが、私の炎を見たのははじめてだ。
何せ合った当時は現実から目をそらすように実験に没頭していたし、炎を出せるほど精神が安定していなかった。
「あの、」
声色が媚びないように、と気を付けたつもりが、柔らかかった彼の表情が強張る。
あぁ、やっぱり困らせた。
「…すいません、貴方のお母様について情報は入ってきていません…」
なかなか本支部には理由もなく近寄れなくて…とお腹をさする彼に首をふる。
彼は今とても重要な立場にいるらしい、余計な心労を増やすのは良くないだろう。
「いえ、こちらこそすみません」
心配を隠すことには慣れた、気にしていないと言うようになるべくテキパキと簡易装置を組み立てて行く。
今日は試作段階を見に来てもらったのだ。
秘密の逢瀬ってこれを言うんじゃないかな、骸君。→←今はただそこで、何も知らずに生きていてほしいのだと。
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まぶぴちょこ(プロフ) - すっごく面白い話で、惹き込まれる作品でした！もう完結なのでしょうか…？どちらにせよ素敵な作品をありがとうございました！ (2022年2月25日 22時) (
レス) @page8 id: 045921842f (このIDを非表示/違反報告)
地味って便利 - めっちゃおもしろいです！楽しみにしてます！ (2020年1月2日 16時) (レス) id: 3582ac3c0b (このIDを非表示/違反報告)
サラダ(プロフ) - 紫苑さん» お返事遅くなって申し訳ありません！ありがとうございます！頑張ります！！ (2019年10月28日 0時) (レス) id: c38cbec620 (このIDを非表示/違反報告)
紫苑(プロフ) - 更新楽しみにしてました！頑張って下さい！！ (2019年10月8日 16時) (レス) id: 14ab16d7c2 (このIDを非表示/違反報告)
サラダ(プロフ) - カリンさん» お待たせしました！待っていてくださりありがとうございます。頑張りますのでどうぞお楽しみに！ (2019年10月7日 19時) (レス) id: c38cbec620 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：サラダ | 作成日時：2019年10月5日 22時
