君にとって一番安全な場所だと認識して。 ページ3
ゆっくりと起き上がった彼女が部屋を見渡してハァとため息を付いた。
「ごめんね、また寝てたみたいで」
「無理しすぎだよ」
仕方なく諦めて上体を起こす。
何年たっても一定以上を許してくれない彼女にさすがに焦れて来るけれど、無理強いはしたくない。
どうせ昨日も匣兵器の研究に就寝時間を返上したのだろう。
「うん、でももうちょっとでお父さんとヴェルデさんが残した匣の中身の解読が終わるんだ」
俯くAを頬に手を添えて、目を合わせる。
「ボンゴレに残したお父さんの…」
「残したのはボンゴレにじゃないでしょ、君にだよ」
彼女の父であり、匣兵器を生み出した１人であるイノチェンティ。
そして彼女の師ともいえるアルコバレーノの一人ヴェルデ。
その二人は、伝えられる中では原因不明の変死となっているが、実際は違う。
殺されたのだ、彼女を欲しているミルフィオーレのボス、白蘭に。
匣を生み出した天才科学者本人ではなく、何故かその娘を欲しがった男は、彼女の父を科学者として迎える訳でもなくAを誘き出す材料に使ったのだ。
死亡が確認された時の彼女の始めて見る涙を拭って、抱き締めてやることしかできなかった歯痒さは一生忘れないだろう。
あのときですら、彼女は僕にすがってもくれなかったけど。
肩までずり落ちている白衣の襟から手を差し込んで脱がしにかかる。
「今日はもう寝て」
「…わかった、でも自分の部屋で」
「寝て」
有無を言わさず肩を気持ち強く押すと、彼女の体を布団が柔らかく受け止める。
どうせ自分の部屋に帰ったところでまた別の資料を開いて睡眠などとらないだろう、それに、なるべく僕の目に入るところにいてほしかった。
諦めたように目を閉じると、直ぐに寝息をたて始めるAの頬をもう一度撫でて立ち上がる。
二の足を踏む奪還作戦にイラつきが一層増していく。
生きているのかも絶望的な彼女の母親の死が確実になってしまうと、本当に彼女は壊れてしまいそうだ。
風紀財団本部基地の僕の部屋の襖を音を立てずに締め切る。
なにもしなくていいよ、と言ったら、君は僕を軽蔑するだろうか。
君にとって一番安全な場所だと認識して。
盲目的だといえば、自立の仕方を覚えてしまいそうで。→←君にとって一番安全な場所だと認識して。
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まぶぴちょこ(プロフ) - すっごく面白い話で、惹き込まれる作品でした！もう完結なのでしょうか…？どちらにせよ素敵な作品をありがとうございました！ (2022年2月25日 22時) (
レス) @page8 id: 045921842f (このIDを非表示/違反報告)
地味って便利 - めっちゃおもしろいです！楽しみにしてます！ (2020年1月2日 16時) (レス) id: 3582ac3c0b (このIDを非表示/違反報告)
サラダ(プロフ) - 紫苑さん» お返事遅くなって申し訳ありません！ありがとうございます！頑張ります！！ (2019年10月28日 0時) (レス) id: c38cbec620 (このIDを非表示/違反報告)
紫苑(プロフ) - 更新楽しみにしてました！頑張って下さい！！ (2019年10月8日 16時) (レス) id: 14ab16d7c2 (このIDを非表示/違反報告)
サラダ(プロフ) - カリンさん» お待たせしました！待っていてくださりありがとうございます。頑張りますのでどうぞお楽しみに！ (2019年10月7日 19時) (レス) id: c38cbec620 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：サラダ | 作成日時：2019年10月5日 22時
